僕の一日 112

斉藤さんの車に石川さんが乗り込む姿を目撃後、
俺からは一度も連絡はとっていないし、
以前はよく送られてきていたメールも途絶えた。
当然、仕事場で会うし話もするが、
以前のように個人的な話をうまく出来なくなっていた。

石川さん自身は特に何も変わっていないよに見えるが……。

「ミサ、最近なんだか元気だね」

積み上げられていた段ボールをレジの横で手早くたたみながら相沢さんが呟いた。
視線の先には笑顔で接客をしている石川さんがいる。

『そうですね、石川さん元気ですよね』

「年明けまで忙しいし、元気なのは良いんだけど」

器用に一つの段ボールに詰め込んで台車に載せた。

「さて、ゴミ捨てに行ってくるよ。ほかにはない?」

『あ、事務所にあるの持ってきます』

急いでバックルームに入ると、
店長の机でパソコンと向き合っている斉藤さんがいた。

「ん?どうした?」

視線に気づいた斉藤さが手を止める。

『あ、いえ、ゴミを持っていこうと……』

「あぁ、ありがと」


机の横に積んである特大のごみ袋を2つ手渡され、
『すみません』と小声で言いながら受け取った。

斉藤さんも特に何も変わった様子はなく、
いつものように淡々と仕事をこなしていた。



あれは単に駅まで送って行っただけなのかもしれない。



自分も同時に仕事を終えて帰るついでに最寄駅まで送った、と、
そう都合よく考えたところで結局は消化不良のまま、
俺は悶々とした日々を送っていた。

気を紛らわすように早番の時は仕事が終わり次第すぐに帰ってホストクラブへ向かい、
勧んで客に連絡をとるようなっていた。
歩さんからはメールはあるが、会いに来ることはなくなった。
冬休み前で忙しいらしい。

バックルームのドアを後ろ手に閉めて、大きく息を吸い込んだ。

「有利はクリスマスの約束ないの?」

俺からごみ袋を受け取り、
段ボールの山の上に無理矢理のせて落ちないようにガムテープで留めながら、
唐突な質問をしてきた。

相沢さんはときどき心臓に悪いことを聞いてくる。

『約束?』

「女の人と」

『あ、えー……残念なことに……』

「そんだけカッコ良くて彼女いないって、逆に疑われない?」

『え?何をですか?』

「ソッチ系なのかとか」

小指を立ててにっこり笑う姿に言いたいことを理解して、
高速で左右に首を振り否定した。

まったくそんな気はない。
一度だって思ったことがない。
それだけは断言できる。

っていうか今までそんな風に思われてたのか……。

『それはないですよ……なんていうか、作ろうと思わないのが悪いんですかね』

「不毛な恋は辛くなるだけだよ」

『……』

少しの間を置いて、
「じゃぁ捨ててくるね」と言って台車を押してお店を出ていく相沢さんに、
返す言葉が浮かばず、無言で後ろ姿を見送った。

相沢さんは何か知っているのかもしれない。

不毛だと言いきってしまえる何かを。


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| 「僕の一日」  | 14:00 │Comments0 | Trackbacks0編集

冬の一日 7

7

「石川、大丈夫か」

握ってくれている手を軽く引っ張られる。

「あ……うん」

「ああいう人間は汚いものに触れる機会が多いから、
 そういうものに飲み込まれてしまっているのかもね」

「……そうなの?」

「みんながみんな、そうではなくて一部だけだと思うけどね」


手渡された名刺には、
私でも聞いたことがある芸能事務所の名前が書かれていた。
あの男性が関係者であるのは嘘ではないんだろう。

ちらりと名刺に目を落とした斉藤さんが、
大きなため息をつきながら無造作にジャケットのポケットに入れた。

「本物かもよ?」

「うん、でも芸能界に興味ないから」

「すぐにでも有名人になれそうだけど」

「どうでもいいよ、大変だろうしね」

「でも前にモデルしていたんだよね?」

「10年以上も前の話だよ」

懐かしそうに笑って、私の手を引いて歩き出した。

「今でもスカウトされるのに?しかも電気屋さんで」

「それは思った!どうしてこんなところで?って。
 たまたま買い物にでも来てたんだろうね」

「聞いてもいい?」

「なに?」

「前にモデルをはじめたきっかけは?」

「あぁ、知り合いに頼まれたから、かなぁ。
 CDのジャケットとプロモに出て欲しいって言われて。
 学生だったし、マイナーで地味にやってる人たちのバンドだったらか、
 そのくらい良いよって、二つ返事でOKして撮影したんだ。
 一日で撮影は終わったんだけど、
 それを偶然見たモデル事務所から誘いを受けるようになってね。
 最初は断ってたんだけど、押し負けたというか、
 あんまり数はこなさないのを条件にやってたんだ」

「す、すごい!本物のモデル!」

さらりと言ったけれど、それってかなり凄いことなんじゃないのかな?

「いつまでやってたの?」

「にじゅう……いち?22歳までかな?」

「撮影した写真とかってないの?」

「ないよ、そんなの」

「えー、もったいない」

「写真が欲しくなったらデジカメがあるからね」

「そういう事じゃないよー」

「ハハハ、まぁ昔の話だよ」

「……最近でスカウトされたのっていつ?」

「うーん、秋頃に歩いててされたかな?」

あっさりと返ってきた返事に唖然とする。
もはやスカウトされるのが日常になっているのか。

「うわぁ……なんかもったいない!」

「俺がモデル再開したら、あそこで働けなくなるじゃん」

「あ、それは困るかも」

「だろう?」


なんの未練もないように思い出として話すということは、
もう一切モデルの仕事はやらないのだろうか。
人に見られる仕事ととはいえ、なりたくてもなれない仕事のひとつに、
簡単に手が届いてしまうこの人にとって、
たいした給料でないはずの雑貨屋で働く価値は、
どれほどのものなのか。

顔を整形したって、ダイエットを頑張ったって、
背が低ければなれないし、
雰囲気や魅せる力も必要なんだろうし……。
この人はそんな努力をしてきたのだろうか。


「あ、ほらあったよ」


お目当てのヒーターを見つけて笑った。

屈折することなんか、きっとなかっただろう子供時代。
雰囲気や仕草から伝わる品。
他の人とは一線を画す存在感。


生きてきた世界が違う。


ああ。
この人は生まれながらにすべてにおいて恵まれた人なんだろう。


「どうした?」

指先から伝わってくる優しさが、
本当に自分だけに向けられているなら、
こんな幸せなことはないけれど。

「なんでもないよ」

何も言われなければ、自信が持てない。


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| 「僕の一日」  | 03:25 │Comments0 | Trackbacks0編集

冬の一日 6

6

勝手に想像して気分が落ち込んでしまい、
そんな顔を見られたくなくて外ばかり眺めていると、
家電量販店の看板が見えた。

「着いたよ。酔った?」

「ううん、平気」

「そう?」


笑って声をかけてくれる。
優しい声。


「じゃあ、さっさと決めて夕飯食べに帰ろう」

「うん」


お店の中に入り、暖房器具が置いてあるところに向かって歩いていると、
突然後ろから声をかけられた。

「すみません」

べたっとした嫌な感じがする声に振り返ると、
そこに居たのはスーツを着た若い男性。
パーマのかかった髪は金色に染められていて、
チリチリと痛んでいるのが目についた。

斉藤さんの知り合いかと思い隣を見ると、
顔色一つ変えずに男性を見つめていた。

「なんでしょうか?」

威嚇にも聞こえるトゲのある口調で斉藤さんが言うと、
少しうろたえながらも男性はポケットから名刺を取り出した。

「わたくし○○芸能事務所の者ですが、突然すみませーん」

私の方は見向きもせず斉藤さんに向かって名刺を差し出しながら言った。

どうやらスカウトらしい。
しかもこんなところで。

「いま駐車場で見かけて。
 モデルや芸能界に興味はありませんか?
 アナタなら間違いなく……」

「結構です」

営業スマイル全開で話し出した男性の言葉を遮るように、
斉藤さんが強く言った。

「あ、えぇーと……○○という大手の事務所ですので、
 そのあたりがご心配なら……」

「興味はありませんので」

名刺に視線を向けることもなく、
目を見つめたまま不機嫌そうな顔で答える姿に圧倒さたのか、
男性がたじろぎ始めた。

一瞬、不気味に笑うと、すぐに頬を引きつらせて困った顔をしたので、
引き下がるのかと思いきや、逆に喰らいついてきた。

「一度うちの事務所に来ていただけないですか?!
 すぐ手配しますから!」

「結構です」

手を合わせて懇願する姿にわずかな動揺も見せず、
キッパリと言い放った。

苛立ちを見せ始めた斉藤さんに、
男性はあきらめたのか肩を落とした。

「わかりました。呼び止めて申し訳ございません。
 ですがこれだけは受け取ってください」

すっかり落ち込んだ声で頭を下げ、
斉藤さんの胸元に名刺を差し出した。

斉藤さんがそれを無言で受け取るとジロリと私を睨み、
ビクッと身体が反射的に硬直したのを見て、
半笑いで足元から舐めるように視線を動かした。

目が合うと憐れむような顔で笑った。


あ……。


見下され、馬鹿にされているのがわかった。

「彼女がなにか?」

私の手を握り、斉藤さんが言った。

「いえ、なんでも」

男性は私に一瞥を投げたあと、
ニヤつきながらお店の出口へ向かって歩いて行った。

こんな女が彼の隣にいるのは滑稽だと言われた気がした。


ぎゅっと締め付けられた胸のせいで、
相手が居なくなってもうまく息が出来なかった。

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| 「僕の一日」  | 15:28 │Comments0 | Trackbacks0編集

冬の一日 5

5

「ここにに居ていいよ」と斉藤さんが言ってくれた。

私が考えてることを言わなくても分かっていて、
大丈夫だよと言ってくれる。
優しく髪を撫でてくれることが、たまらなく嬉しい。


自分と似ているわけじゃない。
むしろ正反対の人なのに、傍に居るだけで安心する。
この人の隣に居れば何も心配はいらない。
どんなときでも助けてくれる。
手を引いてくれる。
そう思える。


だから錯覚してしまう。
自分は斉藤さんにとって特別なんじゃないかと思ってしまう。



仕事が終わり斉藤さんと私は定時で上がった。
みんなには気づかれないように、
私はすぐにお店を出て帰ったふりをして、
ビルから少し離れたところで斉藤さんの車を待った。

程なくして斉藤さんが車で待ち合わせの場所に来てくれた。


「ごめん、寒かったでしょ?」

「ううん、大丈夫」


助手席のドア開けて荷物を後部座席に置いてくれた。


「さて、電気屋に行こうか。
 それとも夕飯食べちゃう?」


私がシートベルトをしたのを確認すると車を走らせた。

「帰ったら何か作るよ。昨日買った残りもあるし」

「そう?じゃあ電気屋に行こうか」

「うん」


こうやって普通に斉藤さんの車の助手席に乗って買い物に行くと、
ホントに付き合ってるような気持ちになってしまう。

彼女がいるかもしれないのに。

でも……彼女いる人が、家に女泊めたりするかな。
しないよね。
たぶん。


あの家にいると、
斉藤さんが誰かとふたりで暮らしていただろうと思われる跡がたくさんあることに気づく。


あの広いマンションにひとりで住んでることとか、
家電のサイズがひとり用ではないこととか。
調理道具が一通りあることも、
食器のほとんどがペアで揃えられているところも。

そんなの最初に部屋に来た時から気づいていたけど、
なにも聞けずに時間だけが過ぎてしまった。

だから期待しない方がいい。
もしかしたら、なんて思うから裏切られた気持ちになる。
はじめから期待しなければいい。
そうすれば打ちのめされずに済む。

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| 「僕の一日」  | 16:16 │Comments0 | Trackbacks0編集

僕の一日 111

運よく確保できた居酒屋の個室で、
ソフトドリンクと適当に注文したつまみを口に運びながら歩さんの話に耳を傾けた。

言いたいことがイマイチまとまっていなかったけれど、
要約すると「俺と会って話がしたかった」のようだ。

男の俺に対しても、
「何を考えているのか」という事や「自分の希望」を口にするのは苦手のようだが、
それ以外のことになると普通の大学生と変わらず、
楽しそうにおしゃべりをする。
大学生活に支障がでないでいるのはそのおかげかもしれない。

「このあいだ先生が話していたんですが……」

嬉しそうに大学での出来事を話す姿を見ていると心が和む反面、
自分もこういう学生生活を送ってみたかった気持ちがこみ上げてくる。
高校を卒業後、
ホストとして働くことを選らんだ自分の判断が間違っていたとは思わないけれど、
友達と楽しそうに会話をする学生や、
サークル仲間らしい集団をみかけると、
本当はそうありたかったと思う気持ちが溢れてくる。

大学生らしい生活や時間というものに、強い憧れをいまも抱いている。


「~それでそういうのを…………どうか、しましたか?」

別なことを考えているのが顔に出てたらしく、
話しを中断させてしまった。

『あぁ、ごめん。なんでもないよ。話を続けて』

グラスに残っていたジュースを一気に飲み干し、
店員に追加をお願いした。

「……疲れますよね、私ばっかり……すみません」

自分のせいだと勘違いした歩さんが申し訳なさそうに呟く。

『違う違う、歩さんは悪くないよ。
 俺が勝手に思い出してボーっとしてただけ』

「……何を?」

『うーん、学生時代?』

「いま22歳ですよね?」

『うん、大学に行ってたら4年生』


仮に大学行っていたら今頃俺は何をしていたんだろう。

就職先が決まって明るい未来でも描いていたかもしれない。
これからは自立するんだ、大人なんだと。

「あ、あの……ホストして長いんですよね?」

『うーん、長いのかなぁ……そうでもないかな。
 もう少しで4年になるんだけどね』

「え?!」

今までにないぐらい大きな声に驚く。

『どうしたの?』

「えっと、だって22歳って」

『うん、そうだよ』

「まだ未成年……」

水商売は20歳以上しか出来ないと思っているようだ。

『お店にもよるけど、基本的に18歳以上ならホストになれるよ。
 大学生で学費を稼ぐためにやっている人もいるし、
 ホストじゃなくウェイターとして働く人もいるし、
 日中は普通にサラリーマンしてる人もいるしね。色々だよ』

「失礼します」と運ばれてきたグレープフルーツジュースを受け取りながら話を続けた。

『イメージとして女遊びをしたい人とか、
 モテたい人がホストになるって思っている人もいるけど、
 基本はお金を短時間で稼ぎたいっていう人が多いかな。
 学生がそうであるように、実家に仕送りするために働くサラリーマンとか、
 将来お店を持ちたいとか欲しいものがあるっていう人もいるし、
 自分の接客技術がどこまで通用するか試す人も、
 接客のノウハウを学ぶためにホストをする人もいるから』

「そうなんですか」

『まあ、お金の為だから頑張れるところもあるんだけどね。
 女の人が目当ての人だって、
 自分のとこにどんな客がくるかわかんないし、
 頑張らないと指名もらえないから、
 その辺は世間のイメージとは違ってかなり大変なんだよ』


ホストになれば楽にお金を稼げると思っている人が多い。
でも実際のところはそう簡単ではなくて、
入って1ヶ月で辞めてしまう人も少なくない。
簡単な気持ちでは続かない仕事なのだ。

『あとお酒に弱い人はキツイ世界なんだよね』

手にしているジュースが入ったグラスを見ながら笑った。

「そういえばお酒飲んでないですね」

『アルコール類は得意じゃないんだ。
 仕事だから飲むけど、今はあんまり無理して飲まないようにしてるし、
 ウーロン茶でごまかすときも多いよ』

「そっか、それでお酒臭くないんですね」

『俺自身、お酒の臭いダメなんだよ。煙草もダメだし。
 基本的に水商売向きじゃないんだろうね』


そう。
なりたくてホストになった訳じゃない。
短期間でお金を稼ぐ手段として、
自分にはこの方法しかないと思ったからホストになっただけで、
それ以上の理由なんてない。

ただ、それなりの覚悟は自分なりに持っていた。

「じゃぁ、どうして10代でホストに?」

まだ曇っていない、大きく綺麗な瞳。
向けられる言葉も心も、悪意はない。
2つしか離れていないのにひどく幼く見える。

『俺のことはこのくらいで、さっきの話の続きを聞こうかな』



俺の言葉に何かを察した歩さんが話題を元に戻した。

間なんだろうか。
ずっと話を聞いていても疲れないのは。
歩さんの間のとり方や声の抑揚が心地よい。
人を落ち着かせる柔らかい話し方。

男の人を前にするとすぐにテンパって言葉を詰まらせるけれど、
それを除けば穏やかな口調に優しい空気を含ませている。


彼女みたいだ。


『……』


あのとき、
俺は何を思って石川さんに合鍵を渡したんだろう。


リストカットしていることを知ってもなお、
優しく接してくれ身体を心配してくれる彼女に、
今の状態から救われたいと思ったのは確かだった。
それならなにも合鍵を渡さなくても、
電話で話を聞いてもらうとか、
どうとでもやりようはあったはずだった。

彼女も拒むこともなくすんなり受け取ってくれたし、
マンションまで様子を見に来てくれるようになったから、
深くは考えていなかったけど。

今思えばとんでもないものを彼女じゃない、
ただの仕事仲間に渡してたんだ。


『うわぁ……』


恥ずかしさのあまり赤面してしまっている自分に気づいて、
両手で顔を顔を隠した。

「え?!どうかしましたか?」

おかしなタイミングで唸りだした俺に驚いて、歩さんがあわてた。

『いや……もう、穴があったら入りたい』

そうだ、なんで俺は合鍵なんて……そんなこと。
しかも今更……。

「あの、どうしたんですか?」

『ごめん、すごい個人的なこと』


意味不明な言葉に困った表情を浮かべる歩さんを見つめて一呼吸置いた。
いまここに居る人は彼女じゃない。

『そうだ、歩さんの名字聞いてなかった』

空気を変えるように声に力を込めた。

「あ、すみません言ってませんでした。
 瀬能です。瀬戸内海の瀬に芸能の能で、せのうです」

『せのう、せのうあゆみ』

ポケットから携帯を取り出し、
登録している名前をフルネームに編集した。

『瀬能。瀬能……きれいな響きだね』

「そうですか?私はもっと普通の名字がうらやましくて」

『あぁ、確かに』

普通の名字にあこがれる気持ちはよくわかる。
俺も間違えず一発で読んでもらえたためしがない。


『鈴木さんや高橋さんっていいよね。
 ハンコを買いに行って無くて困るなんてことないだろうし』

「100均で自分の名字を見かけたことがないんですよね」

『店頭には置いてるところがなくて注文しないと手に入らないんだよね』

「はい。お店に置いてある人が羨ましくて」

『そうそう。
 でもありきたりな名字の人は珍しい名字に憧れるみたいだよ』

「えー、何も得することなんてないですよ」

『ないものねだり、ってとこかな』

「そうですね」


ゆったりとした空気が流れる中で話をし続け、
始発の電車を待って、駅まで歩さんを送った。
駅のホームで電車を待っている間、
何度もお礼を言ってくれた歩さんの声を耳に残したまま、
俺はその足でホストクラブに戻り、早朝営業でも働いた。

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