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僕の一日 121

人ごみの中を急ぎ足で戻って来た斉藤さんが、
息を切らしながら俺の横にいる外国人に話しかけた。
何を言っているのかさっぱりわからなくて、驚いて見ていると、
「ごめん待たせて。これ両替。あとは俺が対応するから」
と、両替が入った袋を俺に手渡し、2人でまた話し始めた。
英語の会話をでさえ生で聞く機会なんて滅多に無いのに、
目の前でドイツ語での会話が繰り広げられているかと思うと仕事どこではなく、
レジを打っている相沢さん以外は2人の会話の行方に耳をそばだてていた。


こうして外国の人と話している斉藤さんを見ていると、
さっきの女性客が「ハーフっぽくない?」と言ったのも分かる気がする。
髪や目の色が茶色いから、ハーフと言われれば素直にうなずけてしまう。
俺の髪も色素が薄くてたまに染めていると思われるが、
それとはまた違った色をしている。
すこし黄色っぽいというか金色っぽい色が混ざっているというか……。
何も言われなければ染めていると誰もが思うだろう。
初めは俺も染めていると思っていたけれど、
根本の色が変わらないのを見て地毛なんだと気づいた。


やっと言葉の通じる人に出会えたからか、
水を得た魚の様にペラペラと話す外国人に笑顔で答える斉藤さんが、
とても遠い人のように思えた。
そうじゃなくても一般人ではありえないよなオーラを放っている人だ。
テレビカメラがあったら映画かなんかの撮影をしてるようにしか見えないだろう。


それからしばらく店内を斉藤さんと一緒に歩き、
買い物を終えたのは30分以上経ってからのことだった。

いくつかの商品を購入した外国人がメモのようなものを渡し、
斉藤さんもネームホルダーから名刺を取り出して何かを書き込んでから差し出した。
嬉しそうに受け取って財布にしまうと、俺を見つめて斉藤さんに何かを呟いた。

「有利くん、ちょっと」

斉藤さんに手招きされて向かうと、
その外国人は慣れない日本語で「アリガト」と言ってくれた。

『いえ!全然話せなくて、慌ててしまってすみませんでした』

出てきた言葉は当然日本語だけれど、
斉藤さんが訳してくれたおかげできちんと通じていた。


「Gute Reise」

心地よいバリトンの声で斉藤さんが言うと、
外国人も嬉しそうに手を振って「アリガト!」と言ってお店を出て行った。



「お疲れ様」

『さ、斉藤さんの方こそお疲れ様です!』

予期せぬ言葉に慌てると、くすくすと笑った。

「有利くんああゆう人苦手そうだよね」

『いや、苦手っていうか外国語を聞くとなぜかテンパっちゃうんですよね、どうしよう、って』

「まぁそんなもんだよ、英語じゃなければ尚更ね」

『最後なんて言ったんですか?』
 
「Gute Reise?良い旅を、みたいな感じかな」

手渡されたメモに視線を落としながら呟く姿は、
なぜか寂しそうで、見ているこっちに痛みが走った。


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| 「僕の一日」  | 23:50 │Comments0 | Trackbacks0編集

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