僕の一日 109

繁華街の一画にある店の中で、
綺麗に積み上げられたシャンパンタワーを眺めながら隣に座る女性の話を聞いていた。
今日が初めてのホストクラブだというOL。

『そうなんですか』

切れの悪い返事ばかりを繰り返している自分に気づきながらも、
気持ちがついてこないことに苛立っていた。
すり寄ってくるOLを遠ざけたい気持ちを抑えながら、
シャンパンを口に運んだ。

『新しいグラス持ってきますね』

空になりそうなグラスに気づいて席をはずし、
バーカウンターでドリンクを作っている片桐のところへ向かった。

「顔色悪いですね」

グラスを洗う手を止めて心配そうに言った。

『体調が悪いわけじゃないんだけど』

新しいグラスにシャンパンを注ぎながら深いため息をつく。

「あんまり無理しちゃダメですよ」

『そうだね。ありがとう』

ふたつのグラスを手にお客が待つテーブルへ向かおうとすると、
ポケットに入れている携帯が震えた。

『もしもし?歩さん?』

いったんグラスを置いて店の隅へ移動しながら電話に出た。

「あ、すみません!お仕事中でしたか?」

周りの音にかき消されそうな小さな声。
反対側の耳を塞いだ。

『うん。どうしたの?』

「あの、メールすればよかったんですけど……」

『うん?』

「あ、今日、そっちに行っても……」

『え?お店に?』

「いえ!お時間をいただけるなら少し会えないかなって」

『あー……えーとね……』

店内を見回しながら携帯に届いていたメールを思い返した。
そんなに混んでいるわけでもないし、約束があるわけじゃない。

『日付変わってもいいなら会えるけど、電車なくなるけど大丈夫?
 もしかしたら送れないかもしれないよ?』

「平気です。なんとかするので」

『わかった。じゃあ終わったら連絡するか、ファミレスで待ってて貰える?』

「わかりました、それじゃあ」

『うん、あとで』

通話を終わらせ携帯をしまった。
なんだか今日は、気持ちがついてこない。

『はぁぁ』

歩さんに会えば少しは気持ちも落ち着くかもしれないけど、
俺の方が愚痴を言ってしまいそうな気がした。

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| 「僕の一日」  | 06:27 │Comments0 | Trackbacks0編集

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