春の一日 22

22

有利くんとおつかいを済ませて店に戻ると、
「今日はもう帰っていいよ」と店長が言った。

俺がいない間さんざん迷惑かけたし、
かなり残業したりみんなの面倒みてもらってたから、
少しの時間だけど今日は早く帰って休んでくれ、ということだった。

寝不足だったし疲れていたのもあって、お言葉に甘えた。


「ただいま」

買い物はせずにマンションに帰ると、
驚いた顔で石川が玄関まで迎えに来た。

「びっくりした。遅番だよね?」

「うん、店長が帰っていいって。
 出張中に迷惑かけたからってさ。
 迷惑なんて思ってないし、仕事だから当然なんだけど、
 今日は人数間に合ってるし、あとは年明けまで忙しいから甘えさせてもらったよ」

「そっか」

靴を脱いで整えてあったスリッパを履くと、
彼女が慌ててキッチンに戻って行った。

「ごめん!いつも通りだと思って、やっと準備しだしたところだった!」

「いいよ、気にしないで。俺も手伝うから」

「そんな時間かからないから大丈夫。
 せっかく早く帰ってきたんだからゆっくり休んでてよ。
 あ、洗濯物乾いたから持って行ってね」

リビングのソファーにきっちり洗濯物がたたまれてある。

「なぁ」

「え?」

「毎食作って掃除やら洗濯までして、大変じゃない?」

「特に大変じゃないけど?なんで?」

「あー……いや、なんだか申し訳なくなるっていうか」

「どうして?お世話になってるのは私だよ」

「まぁ、部屋は貸してるし、料理は1人も2人も同じだろうけど、
 洗濯や掃除は大変だろう?」

「別に大変じゃないよ?
 掃除は簡単にクイックルワイパーで終わらせてるし、ルンバもあるし、
 洗濯だって突っ込んじゃえばあとは干すだけで、1回で終わるし」

「……え?なにお前……」

当たり前のように話しているが、最後の方がおかしい。
火加減を調節する彼女のそばに行って確認した。

「もしかして俺のと一緒に洗濯してる?」

「え?うん。どうして?なにかマズかった?」

呆気にとられる俺をよそに、野菜室からレタスとトマトを取り出して洗い始める。

「いや、俺は別にかまわないけど、嫌じゃないのか?
 おっさんのと一緒に洗って」

「特に気にならないけど……ずっとお父さんのと一緒に洗ってたし、
 別々に洗うと水道代もったいないでしょ?
 浴室の乾燥機だって無駄に使わずにすむし」

確かに浴室の暖房乾燥機を使っていいと言ったけれど……。
それはいま石川が使っている部屋に暖房はないから。

洗濯物はリビングのエアコンで乾かすしかなくて、
でもさすがにリビングに下着は干せないだろうと、
浴室の暖房乾燥機を使っていいと言ったわけであって。

なにも俺のまでキッチリ乾かしてたたまなくても、
寝室のエアコンで乾かせるのに。

しかもちゃんとリビングのエアコンの前にはバスタオルが干してあるし。

まったくの無駄がないというか、なんというか。

「うん、石川が嫌じゃないならいいんだけど、
 無理におっさんのパンツ洗わなくてもいいからね」

「平気だよー。
 そもそも斉藤さんはおっさんじゃないよ。
 その歳でおっさんとは言わないよ」

無駄なお金や時間をかけず家事をするとか、
そういったところしか考えていないのだろう。
俺が言っている言葉の意味も気づいていない。

その辺は相変わらず…。

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| 「僕の一日」  | 16:43 │Comments0 | Trackbacks0編集

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