僕の一日 102

店長に頼まれたおつかいは、
クリスマスのときに使用するラッピング用のリボンや包装紙に、
店内で流すCDを2~3枚、店内を飾り付ける小物を適当に買ってくること。

「CDはどっかいっちゃて見つからないらしくて、
 小物は一応あったんだけど、あまりに汚いから新しくするんだって」

斉藤さんの車で向かった先は、大手CDショップ。
音楽をほとんど聞かない俺は、
いま流行っているアーティストは誰なのかよくわからない。
斉藤さんもあまり音楽の話はしないし、
イヤホンを耳にしている姿も見たことがない。
そんなふたりが店内で流すCDを探すなんて……大丈夫だろうか。

『俺、あんまり音楽のこと分かんないですけど、
 斉藤さんは何聞くんですか?』

「俺?うーん、実を言うと最近のは俺もわかんないや」

CDショップが入るビルに車を滑り込ませながら、いたずらっぽく言った。

「去年に何枚かクリスマスのオムニバスCD買ったからそれを使うと思ってたんだけど、
 どうやら失くしたみたいなんだよね、そのCD。
 俺も探したけど見当たらないからさぁ……まぁあの通りの人だし、
 すぐにモノを失くす人だからさぁ、店長さぁ……」

『……今年は分かりやすいところにしまった方がいいですね』

めずらしく愚痴る斉藤さんに同調しながら、
車を降りてお店へ向かった。



CDショップなんていつ以来だろう。
俺が学生の頃に流行っていた人たちは今も歌っているのだろうか。

『何を目安に買うんですか?』

「うーん、この時期だと各ジャンルのオムニバスのコーナーに、
 いくつか置いてると思うからそれを買おうと思うんだけど」

そう言いながら店内を見渡すと、
クリスマスソング関係のCDをまとめて展開している平台があった。


そして俺も斉藤さんも凍りつく。
オムニバスCDだけでも種類がたくさんあって何が何だか分からないのだ。

「邦楽と洋楽とそれぞれ1枚ずつでいいかな?」

『いいと思います』

「でもどれがいいと思う?有名どころしか分かんないんだよ俺」

『俺は全然わかりません』

「見比べると結構かぶってるのが多いんだよね」

『曲数と値段とを比べるとか』

「うーん、そうだな……」


ふたりでCDを手にしながら唸っていると、
店員がこっちを見ていることに気づいた。

「葵?」

一度見たら忘れられないぐらいインパクトのある髪型をした強面の店員が、
驚いた顔で斉藤さんの名前を呼んだ。


「こんにちわ。お久しぶりです」

斉藤さんが強面の店員に挨拶をする。

「最近さっぱり連絡よこさないじゃんかよ。
 元気にしてんのか?」

「おかげさまで、忙しくしてますよ」

斉藤さんの知り合いらしい。

それにしてもすごい強烈な個性が体中からにじみ出ている人だ。
身長も190センチ以上ある。
横にも大きく筋骨隆々。
ドスのきいた声。
目は細く切れ長で、肌は真夏のサーファー並みに黒い。

この店で、万引きはできない。きっと無理。

「店内で使うクリスマスのCD探してるんですけど、
 いいのってどれですかね?」

「あぁ、去年も同じようなことでウチの店来たよな。
 あれで十分間に合うと思うんだけど、ダメなのか?」

「店長が失くしたんで、また買わなきゃいけないんです」

「それはまぁ、面倒だなー」

「ウチは儲かるけどな」と笑いながらCDを選んでくれ、
社販にしてあげるよと言ってくれた。

「そーいえば紗枝は元気か?」

「元気だと思いますよ。最近連絡してないですけど」

「なんだよ、みずくさいな」

「自分で連絡取ったらどうですか?
 携帯の番号は変わってないですよ」

「俺が電話して旦那さんに勘違いされんのが嫌なんだよ。
 そういったので痛い目に合ってるからな。
 用事がないときは連絡しないようにしてるのさ」

CDを3枚手に取りレジへ向かう店員の後ろを俺と斉藤さんはついて行った。

「この前出た新曲聞いたか?」

「誰のです?」

CDにつけられているタグをはずし、
バーコードを読み込ませながら聞いた店員の言葉に、
少し冷たい口調で斉藤さんが聞き返した。

「……お前、ほんと音楽から離れたなあ……。
 アイツら新曲だしたんだよ」

ため息交じりの声で、寂しそうに言った。

「それじゃぁ、買うかな。
 有利くん、このお金でお会計しててもらえる?
 領収書の但し書きは備品代にしてもらって」

『あ、はい』

その場を逃げるように俺へ1万円を握らせて、
邦楽の売り場えと向かって言った。

ふたりの会話の中に気になる部分がいくつかあったけれど、
俺が首を突っ込んでいい話じゃない。
きっとこの2人はずっと前からの知り合いなんだろう。
斉藤さんのぶっきらぼうな態度は心を許してる証拠に思えた。

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| 「僕の一日」  | 02:37 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

お、なんだか斎藤さんの過去がちらっと見えたような?

有利くんの世界では、どんな音楽が流行ってるんでしょうね?
クリスマスソングオムニバスCDかぁ、私も何枚か持ってますが、あまり聴く機会はありません。
ああいうのはやはりお店で流すものかもしれませんね。

流行語はサイクルが短いですよね。
最近はネット用語もいろいろで、おばさんはついていけません。

「通勤ちうなう、超やばいJKに遭遇した。
俺が微笑んだら彼女も微笑んでくれた。
あの神対応はやばすぎる」

今、思いついて書きましたので無茶苦茶ですが、この文章を昭和の人間が呼読んだら意味不明の部分が多いでしょうね。

ちうなう? JK?
やばいって、どんな危険な女の子なんだろう。
神? 宗教関係なのかな?

なんてね。

おばあさんはいまだに、「素敵なものを買ってるんるん気分の、元気印の私です!!」 なんて言ってますが(^o^)

2016.08.08(Mon) 01:40 | URL | あかね|編集

あかねさま
斉藤さんについては有利よりも先に細かな設定が決まっていて、
若干、それに有利を合わせたところがあります…ごめんね、主人公。

「こんな人生ならラッキーじゃない?」というのをこれでもかと詰め込んで、
でも「実は一番可哀想かも」というのが斉藤さんです。
故に顔も良くてスタイルも良くて昔にちょっとだけモデルをしていた、
などという設定になるんですね。
人生楽勝!!という感じでしょうか。
今で言うとイージーモード!!

最近は意味不明な言葉が多いですよね。
とか言いつつ、「なうい~」と言ってるスマホのCMを見て笑っているのも、
これまた同じなのでしょうか……。
でも私たちの時は仲間内だけでしたよね。


思っているよりも涼しい8月です。
去年は夜も汗だらだらでしたが今年はぐっすりです。
冷房をつけなくても平気なのはやはり東北だからですね。
大阪はやっぱり猛暑でしょうか。
大阪の夏は何がおいしいですか?やっぱりたこ焼きですか?

2016.08.11(Thu) 16:08 | URL | ハル|編集

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