冬の一日 4 

4

ピーンポーン。


静まり返った広い部屋に響くチャイム。
さっきよりも大きい音のように感じられた。
あわててモニターを確認すると、郵便配達員の姿があった。


「こんばんは。夜分に失礼いたします」


玄関のドアを開けると40代後半ぐらいのおじさんが、
手にしている封筒に視線を落として言った。

「えーと、斉藤葵、ノエさん?」

「え?」

「え?」

反射的に出た声に、
おじさんも間の抜けた声で聞き返してきた。

「斉藤さんのお宅ですよね?」

「あ、はい……」

「これ、ここで住所あってますよね?」

差し出された封筒に目をやった。

クレジットカード会社の名前が入っている封筒。
住所の下に書かれていた文字は、
「斉藤 葵ノエ 様」だった。

「はい、そうです」

この部屋の住所はわからないけど、
斉藤葵と書かれているものなら間違いはないはず。
夜に書留の配達なら、
一度不在通知が入っていて再配達の連絡をしたということだから、
大丈夫、だと思う。

「フルネームでサインかハンコをお願いします」

小さな紙を受け取り、そこに判を押した。

「こちらですね。それじゃぁ失礼します」

封筒を私に手渡すと、
おじさんは特に何も気にする様子もなく足早に行ってしまった。

書いてある名前をもう一度確認する。


「斉藤葵……ノエ」


のえ?

クレジット会社側の登録ミス?
気づかずにそのまま印刷されてしまった?

でもクレジットで名前の登録ミスなんてあるのかな。
漢字が違うとか読み方を間違って登録するならわかるけど、
名前の後ろにカタカナを余計に打つとか、ありえない。

じゃぁ、サイトウ・アオイノエが本名?

でも、斉藤さんの名前が記載されているものに、
「ノエ」なんて書いてあるのを見たことない。

タイムカード入れに差し込まれる給料明細も、
ショッピングビルの裏口から入るためのセキュリティーカードに書かれている名前も、
さっきの宅配便も「斉藤葵」だった。

バイト先でパソコンを使用する際にログインして表示される名前だって、
「斉藤葵」になっているし、
クレジットのサインだって「Aoi Saito」と書いていたのを見たことがある。

となるとやっぱりこのカード会社の登録が間違っている可能性がある。
もしかしたら斉藤さん自身、
気づいてないかもしれないから帰ってきたら聞いてみよう。
きっと答えてくれる、はず。


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| 「僕の一日」  | 04:38 │Comments0 | Trackbacks0編集

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