冬の一日 2

2

自分のことでいっぱいいっぱいになっていたけれど、
有利くんはもう大丈夫なのかな。


いつも優しいはずの斉藤さんが、なぜか責めるようなことを言っていた。
体調が万全ではなかったこともあったんだろう有利くんは、
斉藤さんの言葉に固まってしまっていた。

結局、仕事はせずに斉藤さんと有利くんはふたりで帰って行って、
そのあと何を話したのか、私は知らない。
そもそも休みに何をしに斉藤さんはお店に来たのか……。
電話口での有利くんの声を聞く限り、
あの話はもうしていないだろうし、
ふたりの関係にも問題はないんだろう。

私が悩んだところでどうにかできることではないと、
分かっているけど。


ぐるぐると回りだした頭の中を停止させるようにチャイムの音が鳴って、
反射的に身体が震えた。

言われていた通りインターホンの画面で相手を確認すると、
見慣れた服装の宅配業者がいた。

渡されていたハンコを手に、玄関の内鍵をはずしてドアを開けた。


「宅配便です。斉藤葵さんですか?」


心の中で『いえ、私は石川です』と呟きながら、小さく「はい」と頷いた。


「こちらにサインか印鑑をお願いします」


某宅配業者は厳しくかなり体育会系で、
肉体的にも精神的にも辛く逃げ出す人が多いと何かで読んだことがあった。
たくさんの家を回って疲れているはずなのに、
微塵も感じさせないさわやかな笑顔を向けられ自分もつられて笑顔になった。

当たり前だけど“石川”以外のハンコを押すのは初めてで、
なんだか胸のあたりがくすぐったくって、少し恥ずかしかった。


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| 「僕の一日」  | 02:57 │Comments0 | Trackbacks0編集

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