冬の一日 1



斉藤さんのマンションに来て6日目の夜、
部屋の鍵とハンコを私に渡して、斉藤さんは出かけて行った。

夜7時。
今から家族そろって夕飯と言う家庭もあると思う。
そんな時間に出かけて、帰って来るのが翌朝9時だなんて。

友達の仕事を手伝いに行っていると言われたけど、
その内容は知らない。
聞いてもはぐらかされるだけ。
明日だって遅番で仕事があるのに……。

日中じゃなく夜に手伝う仕事ってなんだろう。
お店かなぁ?バーテン?
工場とか?ライン作業?
どっちにしても毎日じゃなければお小遣い程度しかならないし、
隠す必要もないと思うんだけど。

「……夜の仕事?」

突然浮かんだ言葉に自分で驚いた。

斉藤さんがそういう仕事をする理由なんて……。

友達が経営者で、カッコイイからって手伝ってくれって言われて、
ホストをやっているとか……。

まさかとは思うけど、それだったら行き先を言わない理由も、
出かける時間帯も説明できるような気がする。
このマンションだってひとりで暮らすには広すぎるし、
家賃だっていくら払っているのか想像がつかない。
社員といえど、そんなに高い給料を貰ってるわけじゃないはず。

どう考えても収入と支出のバランスがおかしい。

冷蔵庫も洗濯機もひとり暮らしにしては大きすぎるし、
家の中にある家具や調理道具も安くないものだと見て分かる。

親に家賃や車の費用なんかを出してもらってる可能性もあるけど、
斉藤さんはそういうの嫌がるような気がする。

でも……ホストをしていれば、この暮らしも納得できる。

斉藤さんならNo.1になれそうだし。



突然バイトを休んだ私を心配して部屋まで来てくれ、
そのまま一緒に斉藤さんのマンションに泊まらせてもらったのが5日前。
こんなに長い間泊まるなんて自分でも思っていなかった。
布団まで買ってもらっちゃって。


着替えを取に行ったとき、本当は悩んだ。
大丈夫と言って斉藤さんのマンションには戻らず、
自分のマンションで休むか。
何回使うかもわからない布団一式を買わせずに済んだし、
仕事だって普通に行っているんだから、
もう自分のマンションに戻ればいいのに。
でも。


“石川、おいで”


あんな声で呼ばれて、
あんな風に優しくされたら、甘えたくなる。

自分はそれを許されているんじゃないかって、思ってしまう。


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| 「僕の一日」  | 03:52 │Comments0 | Trackbacks0編集

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