僕の一日 98


相沢さんと一緒に売り場に出て、彼女から仕事を引き継いだ。

「あ、店長いまメーカーと打ち合わせ中で、
 終わったらそのままお昼休憩行くからって言ってました」

「わかった。じゃぁ、ミサは休憩入っていいよ」

「はーい」


何事もなくいつも通りに交わされる会話に、
俺一人が戸惑っていた。

バックルームからカバンを持ってきて社食に向かう彼女を見送る俺に、
相沢さんが声をかけてきた。

「そんな名残惜しそうな顔して、バレるよ?」

『え?!』

「本人にじゃなく周りにね」

『そ、そんな……そう、ですか?』

「少なくても私は気づくかな。
 それにしてもどうしたの?すこしピリピリしてる気がする」

『……顔に出てますか?』

「顔っていうか空気に?
 いまお客さんいないから気を抜いてるせいかもね」

当たり前のように話す相沢さんに、敵わないなぁと思いながら、
レジの担当番号を自分のものに打ちかえながら言った。

『どこから話せばいいのか分からないんですけど、
 なんか石川さんにいっぱい迷惑かけたこととか、
 俺が休んでる間、毎日斉藤さんにうちに来てもらってたこととか、
 もちろん相沢さんにも他の人にもいっぱい迷惑をかけたんですけど、
 その、なんというか……』

「結局、ミサが体調を崩した原因が自分なんじゃないかっていうことと、
 ミサが体調崩した時に斉藤さんがどれだけ面倒をみたかってことでしょ?」

核心部分をついて得意気に笑う相沢さんの表情に、
色んなことがバレているのではないかと不安になる。

『えー……と、まぁ、そんな感じです……』

「そうだねー。私は何も聞いてないし知らないけど、
 まぁ、ミサの部屋には行ったんじゃない?」

レジカウンター横に積まれている段ボール箱を開けながら、言葉を続けた。

「有利くんのときは毎日部屋に来ていたわけでしょ?
 ミサのときにそれをしない理由もないし、
 店長がいない間は斉藤さんが代行だから、
 スタッフの面倒見るのは当然のことだと思うよ。
 斉藤さんの場合は、少し面倒見過ぎなところがあるけどね」

『……そうですか?』

「私はほとんど休んだことないし、
 彼氏と同棲してるから斉藤さんがうちに来たことはないけど、
 体調を崩したりすると、いつも以上に世話を焼くところがある気がする。
 そこまでしなくても大人なんだから放っておけばいいのにって、
 思うことが時々あるんだよね」

俺自身は斉藤さんがしてくれたことをお節介と思っていないし、
むしろ助かったと感じている。
彼女だって具合が悪くてどうしようもないところを、
病院に連れて行ってもらったかもしれない。

今まで一度もないけれど、斉藤さんが体調を崩してどうしようもなくなったとき、
今度は自分が出来る範囲のことをしようと思っていたぐらいだ。


「そういえば斉藤さんが具合悪くしてるとこ、見たことないなぁ。
 休んだこともない気がする」


思い出したように相沢さんが呟いた言葉を、
俺は気にも留めなかった。


もし彼が彼女の部屋に行っていたとしても、
それは当然のことなのだ。
気にしなくていい。

もっと別のこと。


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| 「僕の一日」  | 16:38 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

有利くんがこんな感じだからなのか、周囲の人々はみんな、はっきりしているというか、しっかりしているというか、おつきあいすると疲れそうな感、なきにしもあらずですよね。

昨日、犬と猫の動画をいくつか見ました。

ケージの中に入れられて、六匹の猫に観察される仔犬。じとじとじとーっの視線にも、仔犬だからなのか、まるで動じていない。

犬にあそぼうよーとちょっかいかけられて、ちょっと怒っているチータの子ども。チータも子どもだと「しゃーっ!!」と怒って猫、じゃなくてチータパンチ。まったく猫と同じなのですね。

どこかの外国で猫が家の中にいると、クマが外にやってくる。ガラス戸越しに猫が猫パンチをお見舞いすると、クマはすごすご逃げていきました。

外にいる何匹かの犬と一匹の猫。戸を開けてもらえなくて、猫が飛び上がってなにかをすると、するするっと戸が開きました。
猫ってやっぱりかしこいですよね。

などなど、あの手の動画は次から次へと見てしまって止まりません。
テレビ番組だと二時間でもあっという間ですよね、猫を見ていると。

うちの猫はたった今、画びょうをはずそうとたくらみ中。画びょうが大好きなのです。
そういえば、「押しピン」って関西方言なのですか? そちらでは押しピンとは言いません?

2016.03.01(Tue) 23:17 | URL | あかね|編集

あかねさま
細かいことを気にしたり気づいてしまう人は、おおざっぱな人と付き合うと疲れてしまうことが多いですよね。
有利もそのタイプです。
気にしなければ良いとわかっていても気づいてしまったことはなかったことにできなかったり、
切り替えが下手でずるずると引きずったり。
すぐにキャパオーバーしてしまう。
そういう人は世の中生きにくいでしょうね。


押しピンって初めて聞きました!
こちらは普通に画びょうですね。

あ、小学生のときに教室の壁に貼られている絵をロッカーの上に登って外していて、
何個か画びょう落としたのは分かっていたのに、
どこに落ちたかなんて考えていなくて、
ロッカーから下りて上履きを履いたら中に画びょうが……なんてことがありました。
完璧に自分が悪いんですけど、なんだか切なくなったのを覚えています。


地方によって違う言葉だと、
ずっく(靴。主にスニーカーのこと)、かっとばん(絆創膏)、
ジャス(ジャージ)、傘をかぶる(差すの意味)、ゴミを投げる(捨てるの意味)、
いずい(違和感がある、しっくりこないの意味)、おはよう靴下(穴のあいた靴下のこと)等々。
「ひ」が発音しにくいのか「し」になっていることも多いです(例:ひがし→しがし。ひらがな→しらがな)

東北はなまりがキツく、仙台市、と限定すると少ないですが、
地方だともれなくお年寄りから子供までイントネーションがおかしいです。
特にお年寄りのなまりはひどくて、
インタビュー映像には必ず翻訳された字幕が表示されます(笑)

おもしろいですね、小さい国の中で同じ言葉なのに通じないことがあるなんて。

あとは寒い地方では昔、こたつは掘りごたつに練炭だったので、
その中に入って寝ている猫が一酸化炭素中毒で「おえ、おえっ」となって、
首根っこ掴まれて外に放り出されるのがよくあったそうです。


猫の動画は何時間見ても飽きないですよね。
自分が知ってる動画がテレビで流れると嬉しかったりして。
まったく猫に関係のない本の帯がなぜか猫だったときは笑いましたが、
猫ブームのおかげでCMも楽しく見ることが出来ます。


いつもありがとうございます!
もっと猫話&地方あるあるを利かせてください!

2016.03.04(Fri) 03:32 | URL | ハル|編集

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