春の一日 8

8

「毛布があればどこでも大丈夫」という石川に、
「いくらなんでも毛布1枚では寒いから」と掛布団を渡し、
リビングのソファーに寝かせた。

寂しそうな顔を笑顔で受け止めたあと「ゆっくりやすみなさい」と言って、
俺は自分の部屋へと入り、鍵を閉めた。
すぐさま壁側によけておいたパーテーションを自分が通れる程度の間隔をあけ、
ドアを開けても外から部屋の中が見えない様に置いた。

引っ越してきたその日にこの部屋のドアノブを鍵付きのものに取りかえ、
出かけるときは必ず鍵をかけるようにしている。
当然、誰かが来たときも勝手に入られない様に鍵はかけたまま。

壁一面本だらけのこの部屋に、家族以外の誰も入れたことはない。

リビングと違ってこの部屋は綺麗に片付いているという事はほとんどない。
床掃除はルンバに任せればいい、なんてこの部屋には通じない程、
床にはモノが散乱している。
なんとかしないといけないと思いながら、なかなか出来ずにいるのだが、
ここ半月くらいは本当にひどい状態だった。

「眠い……」

お風呂は朝入ろう。

携帯のアラームを6時半にセットして、そのままベッドに倒れ込んだ。

今日は店長が出張から戻って来るし、有利が出勤してくれるし相沢もいるし、
なんとか店は回せるだろう。
クリスマス関連商品の展開を考えて、
あと去年買って店長がどこかにしまったクリスマスソングのオムニバスCDも探して、
ラッピングの袋もクリスマス用のを準備しないと……。


頭の隅で今日の仕事を考えながらソファーで眠る彼女のことを思っていた。
有利に会っていつの頃からか共依存の関係になったふたり。
他人のことなのだから好きにさせればいいと思った時期もあったが、
ふたりの関係はどんどん悪い方向へと向かっていった。
おそらくあのふたりは互いの存在なしに立っていられないだろう。

まずは彼女に彼の世話をすることで、
彼が救われていると思っているところが間違っていると指摘して、
それらの行動は彼をコントロールし支配しているのだと認識させ、
ひとつひとつやめさせていかなければいけない。


でも。
そうやってふたりを引き離して、問題なく仕事ができるだろうか。

今回のように仕事が手につかなくなったり、
体調を崩して休んでしまうことになったりしないだろうか。

これ以上のフォローははっきりいって出来ない。
基本的な生活が乱れれば、俺だって体調を崩してしまう。

店長も俺もふたりに続けて働いて欲しいと思っている。
だからこそ自分に出来ることはしたいのだけど、踏み込んではいけない一線がある。

あぁ、でも……。
その一線もあと半年もすれば関係なくなってしまう。

仕事仲間と言う関係も。


あと少し。



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| 「僕の一日」  | 02:38 │Comments0 | Trackbacks0編集

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