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僕の一日 92

すし詰め状態の電車に揺られ、病院がある駅まで向かう。

いつものように改札口を抜けて外に出たところで、
肩から下げていたカバンが何かに引っかかり、あやうく転びそうになった。
驚いて振り向くと、そこにはひとりの小柄な女性。

「あ、あの!」

その一言を発したあと、女性は俺のカバンを掴んだまま黙り込んだ。
お団子ヘアーをしたその人が誰なのか、まったくピンとこない。

『え……っと、なんでしょうか……』

誰か別の人と勘違いしているんじゃないかと言いそうになったが、
ホストクラブに来ていた人の可能性も捨てきれない。

「私のこと、覚えませんか?」

『え?』

「先月、この駅で助けてもらった……」

『先月?』

この駅は病院に来るときにしか使わない。
この駅を通ったのは1か月前。

『……あ』

石川さんが俺の部屋に来たあの日、
今日と同じような満員電車に乗って確かにこの駅で降りた。
女性の手をひいて。

「思い出してくれましたか?」

『あー、あのときの大学生』

「そうです!あのときはありがとうございました!」

『いえ、気にしないでください』

あの時、俺の耳に届いた音の持ち主。

「ずっとお礼がしたくて……でも連絡先も知らないし」

『……ここを通るのを待っていたんですか?』

「はい!1ヶ月待って会えなかったら諦めようと思っていたんです」

以前に会った時とは違って、ハキハキとした声。
不快な音は聞こえない。

『まさか、この時間ずっと?』

「はい……あ、でも講義には間に合うようにしてました」

1ヶ月もの間、毎日。

『……そう…でしたか。
 あ、じゃぁそろそろ時間ですよね?』

「そうなんですけど……でも!あの!
 よろしければこのあと食事でもどうですか?!」

通勤ラッシュでたくさんの人が流れる時間帯。
大声だったわけではないが俺のカバンを掴んだまま、
何か必死に話している姿は、それだけで人目を引く。

俺が彼女を困らせているような図になっている状態を何とかしないと……。

『えーと、すみません、まずここ避けませんか?
 駅の入り口のど真ん中ですし、邪魔になるので……』

「え?」

俺を捕まえることが第一に目的だったようで、
周囲の視線など気にしていなかったらしい。
はたと気づいて慌てて俺のカバンから手を離した。


携帯電話を持っているのが当たり前になったいま、
ほとんど使われることのなくなった公衆電話の前まで移動する。
俺の後ろをうつむきながらついてくる姿は、
すこし歩さんに似ている。

……いや、似ているか?
正反対の性格のような気もするが。
でも「大学生」という雰囲気と小柄なところははふたりとも同じだ。

「すみません……やっと会えたので、つい……」

『いえ、気にしないでください』

頬が赤みを帯びている。
表情と会話の流れから読み取れるのは感謝というより好意だ。
そういば助けたときに名前を聞かれたっけ。

なんとなく何を言いたいのか想像がついてきて、
早くこの場を切り抜けることを考えた。

とはいえまた来月もこの駅で待ち伏せされたらたまったもんじゃない。

「あの、先日のお礼をどうしてもしたくて……。
 連絡先も聞いていなかったし」

手をひいてホームに降りたあの日のように、女性がうつむいた。


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| 「僕の一日」  | 01:02 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

前にも書いたような気がしますが、有利くんはもてたくないのにもててしまう、ある種の男性から見たら憎らしい奴でしょうねぇ。

でも、それが迷惑だったりする。
あるいは、有利くんだって女の子にもてるのはどこかしら嬉しいのでしょうか。

私のブログにコメント下さった分のお返事にも書きましたが、SUNたまたまちゃんに会ってきました。
http://quianquian.cocolog-nifty.com/blog/

岡山にもたま電車とたまバスが走っているという記事です。よろしかったら見てやって下さいね。

近いうちに和歌山にも行って、二代目駅長をしっかり見てくるつもりです。

こっちのブログでは猫の写真もけっこうアップしているのですが、ある時期は黒猫ばっかりだったり、今回はぶちとキジトラばっかりだったり、不思議とかたよりますよね。

三毛猫はあまりいないなぁ。
三毛猫ほしいなぁ。

2015.09.22(Tue) 01:15 | URL | あかね|編集

あかねさま
同性から見たら憎たらしい奴ですよね、有利は。
本人は好きでもない人に告白されても困ってしまう、といったところです。
人生損していますね。


あぁ。猫、さわりたい抱きたい撫でくりまわしたい。
ガラス越しじゃなく直に触りたい。
そんな欲求ばかりが溜まっています。

近くの駅に猫駅長がいたら毎日通うのに。。。
乗り物酔い激しいけどバスにも乗りたい。。。
ニタマにsunたまたま……かわいいよー!!


母の実家ではずっと三毛猫を飼っていたそうで、
家を出るまで三毛猫以外、飼ったことがなかったそうです。
それが結婚後、実家に行ったら「あら、三毛じゃない」みたいな。
ちょっとがっかりしたそうです(笑

2015.09.24(Thu) 00:09 | URL | ハル|編集

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