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僕の一日 79

彼女が休んだ翌日、言われた通り早番で出社すると、
レジ横にあるパソコンで作業している斉藤さんがいた。

『おはうございます』

「んー、おはよう」

パソコンから視線を離さず返事をする斉藤さんの目がいつもより鋭い気がした。
全体的に覇気もなくどんよりとした雰囲気が漂っている。
なんだろう、いつもと違う気がする。

『大丈夫ですか?……なんか……』

俺の声にキーボードを打つ手を止め、メガネをはずした。

「うーん、寝不足なんだ。眠くて耐えられそうにないから早めに出社した」

『え?寝てないんですか?』

「1時間ぐらいは寝たと思うんだけど、さすがにそれだけじゃ足りなくてね」

『1時間?!なんかあったんですか?』

「ちょっとね」

目をこすりながらあくびをし、大きく首を回した後に背伸びをした。

「さすがにこの歳になると、徹夜っぽいのはキツイんだよねぇ。
 しっかり寝ないとあとで大変なんだよ」

笑いながら眼鏡をかけ直す。

『……斉藤さんて今年で何歳ですか?』

そんなに年上だったっけ?

「あれ?知らない?言ってなかったかな?今年で32だよ」

『え?!』

「なにその顔は。有利くんより一回り上だよ」

あまりの衝撃にあんぐり口を開けてしまった。
あわてて手で押さえたが、その顔はバッチリと見られてしまった。

『そ、そんな上にみえないですよ……ビックリした……。
 でも誰かに28歳って聞いた気がする……』

「それって俺がここで働きだした年齢じゃない?」

『あ…そうかも……店長に聞いたような……』

「まあ、それだけ年上ってこと。
 有利クンが俺を落ち着いた余裕のある大人な人、と思う部分があるなら、
 それは間違いなく年齢的なものだと思うよ」

確かに10歳も離れていれば、斉藤さんから見た俺は子供っぽいんだろうけど、
それだけじゃないと思う。
この人が持っている雰囲気や相手を落ち着かせる空気の理由は。

「じゃぁ、俺はこのまま返品作業しながら店内の掃除するから、
 レジの準備お願いしていいかな?」

『はい』

言われた通りすぐさまカバンをロッカーにしまい、
テナント全店舗の金庫がある1階の事務室に向かった。
本当は彼女のことを聞こうと思っていたが、なんだか聞けずに終わってしまった。

“寝不足なんだよね……1時間くらいは……”

『まさか……』

いや、まさか。

そんなの、あるわけない。

ない、絶対ない。

斉藤さんの寝不足は個人的なことが理由で彼女は関係ない。
きっとそうだ。
っていうか、聞いてみればいいんだ。

『・・・・・・』

いや、聞けない。

でもまぁ、聞けたとしてもと彼女が絡んでたらうまくごまかすだろう。
いつも肝心なところは知らずに終わっている。

彼女が何を無理しているのかとか、俺の弱さに気づいたとはどれことなのかとか。

大事なことは全然。
それに気づけない自分自身が情けない。

斉藤さんのような人になりたいなんて、無理にきまってるのに。

自分の周りにいる人を優しく大事にして、いつも笑顔で接するなんて、
言葉は綺麗だけれど、それはとても難しい。
自分のことすらちゃんと出来ない俺は他の人に気を配れる程の余裕も優しさもない。
出来るのは家族のために働くだけ。

それだって「家族の為」と言うけれど、突き詰めれば自分の為でしかない。
寝る間も惜しんで働く母の辛そうな姿を見たくないとか、
弟がやりたいことや進学について、
俺や母に遠慮して本音が言えなくなる状況は可哀想とか、
きっとそんな気持ちが、知らないうちに俺の中で大きくなっていたんだ。

家族が辛い思いをしている姿を見るぐらいなら、自分一人が苦労する方がずっといい。
お金に余裕さえ出来れば、母も楽になるし、
弟だって何も気にせず進学先を選べる。

高卒で何のとりえもない俺が勤められる会社の給料なんてたかが知れてる。
それだけではきっと弟が希望する大学へやるだけのお金を貯めることは出来ないだろう。
だったら手っ取り早く稼げる仕事をすればいい。
そうすれば寂しそうな弟や必死に働く母の姿を見ずに済む。

そうやって楽な方へと逃げ続けた結果が、いまの自分なんだ。
お金を稼ぐことしかできない。
家族の為と思うなら金銭的な面だけでなく、
一緒に暮らして精神的負担を軽くするのが一番大事なのに、
そこから俺は逃げてしまった。

斉藤さんみたいに精神的な部分で誰かを助けるなんて、俺にはできない。

俺の為に必死になってくれる彼女の負担を軽くしてあげることなんて、
きっと無理なんだ。


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| 「僕の一日」  | 02:45 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

斎藤さんっていい人なのかなあ。
実は……だったりするのかな? などと疑いも抱きつつ、楽しませてもらっております。

私は寝不足には強く、不規則な生活にも強いのですが、最近はじわじわーっとそういうのがこたえるようになってきました。

イギリスに行ってもまったく時差ボケしなかったんですけどね、もう駄目かも。

それにしても有利くんは、斎藤さんに憧れて尊敬してるんですものね。そういう目で見てると曇りが出てきそうで、だまされないようにね、ってのはうがちすぎでしょうか?(^o^)

2015.02.02(Mon) 00:44 | URL | あかね|編集

あかねさま
いつもありがとうございます。

私は完全に夜型人間です。
いくら早く寝ても朝は辛く、なかなか起きられません。
しかし夜になると目が冴えて活発になります(笑
規則正しくても朝は常に辛い、眠い。
学生の頃がそうでした。
仕事はいつもシフト制で遅いと0時までなんてこともありましたが、
それ自体は平気で、むしろ午前中よりバリバリ働いてました。
そして次の日辛い……。


有利くんは完全に私のタイプの人間です。
反対が斉藤さんですね。

穿った見方です!……と言いたいですが、当たりです。
バレバレですよ有利!

2015.02.02(Mon) 02:07 | URL | ハル|編集

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