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僕の一日 64

店に戻ると美貴さんの隣にはひとりのホストが座っていた。
俺たちの姿に気づいた美貴さんがホストに何かを言うと、すぐに席をはずしてくれた。

「歩!どうだった?」

「うん、大丈夫だった」

『じゃぁ歩さん、僕を指名でいいですか?』

「え?!指名?!」

勢いよく美貴さんが俺の方を振り返る。

『はい。今日はコース内に指名料はいっているので大丈夫です。
 美貴さんは誰か指名したい人いますか?』

「私も直哉さんでいいです。歩もその方がいいだろうし」

『分かりました。じゃぁ少し待っててください』

指名が入ったことをフロントのスタッフに伝え、
俺がいる間、あのテ-ブルには誰も来ない様に伝え、
ふたりのビールと紅茶を持ってテーブルに戻ろうとした時だった。


「直哉!!」

名前を呼ばれ振り返ろうとしたところに勢いよく抱きつかれる。
京子さんだ。
抱きつかれた拍子にバランスを崩してしまい、少しだけ紅茶を床にこぼしてしまった。

「会いたかったー!」

『お久しぶりです京子さん。早かったですね』

「だってー、早く会いたかったんだもん!」

『長い間連絡もせずにすみませんでした。
 えー……すみません、ちょっと離れてもらってもいいですか?
 ドリンクこぼしてしまったんですが……』

「えーっっ!」

『すぐ行きますんで、席に行っててもらってもいいですか?』

「え――っ!!やだぁ!」

『いや、ホントに全部こぼしちゃうので……』

「やーだー!そばにいるー!」

『……』

京子さんはボトルをいっぱい入れてくれる大事な客である。
でも少しくらいはこっちの都合を考えて欲しい。
とはいえこれは仕事なわけだし、どうすればこっちの言う事を聞いてくれるか、
それなりに分かっている。

『すぐに行きますよ』

顔を近付け耳元で呟くと素直に「分かった!すぐだよ!!」と言って、
手を振りながら奥の部屋へ消えて行った。
誰にも分からないようなため息をつき、バーカウンター内に入って紅茶を入れ直した。

「京子さん相変わらずですね」

バーカウンターでドリンクを作っているホストの片桐に、
周囲に聞こえないような小さな声をかけられる。

『今日はもしかしたらいっぱい迷惑かけるかも……』

「いいですよ。じゃんじゃんボトル入れてもらってください」

うちの店にはバーテンダーのような仕事をメインにしているホストがいる。
もちろん指名されれば普通にホストとして対応するが、
仕事のメインはカクテルなどのドリンクを作ること。
片桐潤が彼の源氏名。
同い年の22歳だが、俺の方がホストの先輩と言うことで敬語を使ってくれている。

『がんばります』

入れ直した紅茶とグラスを手に二人の元へ戻った。

『すみません、お待たせしました』

紅茶とビールを二人の前に置き、歩さんの隣に座った。
美貴さんが興味津々といった様子で話しかけてきた。

「もしかして今の人って直哉さんを指名してる人?」

『そうです。ちょっと行かなきゃいけないんですけど大丈夫ですか?』

「本人が頑張るって言ったので、私は付き合いますよ」

『無理しないで、ダメだと思ったら会計してもらって構いませんんから』

「分かりました」


うつむいたまま黙っている歩さんはさっきの俺を見てなんと思ったんだろう。
俺に対するイメージも少なからず変わっただろうし、
さっきの忠告だって忘れてはいないだろう。

『歩さん?大丈夫?』

「あ、大丈夫です。すみません」

『僕が平気になったんだから、そのうち大丈夫になりますよ』

「そうだよ!彼氏がいたんだから、そのうち治るって」

なんの前触れもなく放たれた美貴さんの言葉。
彼氏がいた?
驚いた表情を隠せなかった。

『彼氏がいたって……』

「この子の男嫌いはここ3ヶ月のことなんです。
 その前までは彼氏もいたし、別に普通だったんですよ。
 なんでそうなったのか自分でも理由がよくわからないみたいで。
 もちろん彼氏とは別れたんですけど」

それは理由がわからないんじゃなくて、その彼氏が原因なんじゃないのか?
なにか嫌な思いをしたから、急に男性恐怖症になったと考えるのが普通だ。

『歩さん、本当?最近までは平気だった?』

「はい……」

『だったらなにか彼氏と嫌なことがあったわけだよね?』

「……」

「それが聞くとそういうのは一切なかったって。
 実際付き合ってたのって、優しいひとだったし」

なにか隠している。
友達だから話せなことがあることに美貴さんは気づいていないのか。
でも本人に自覚があるなら、それさえ克服すれば平気になる可能性が高い。
実際、俺が隣にいても平気なわけだし。

『歩さん……』

声をかけたところに内勤のスタッフがきて耳打ちされる。

『わかりました。すぐ行きます』

想像していた通りだけど、彼女が俺を連れて来いとうるさいらしい。
しかも今日はVIPルームにいる。

『すみません、ちょっと行ってきます』

「え?時間ですか?」

『はい。すみませんが……すぐ戻りますから』

「仕方ないです。ね、歩」

「……」

行かないでほしいと顔に出して必死に目で訴えてくる歩さんに、
小さく頭を下げて席を離れた。

これは仕事なのだ。
金になる方を優先するのは当然のこと。
それに二人はもう店に来ることもないだろう。
そうすれば関係はなくなる。

それでいいと思う。

ホストと客の関係ないんて所詮お金でしかない。
お金のためにホストは客を相手にするし、
相手だってそれが束の間の夢だと分かっていても、夢を金で買うのだ。

綺麗ごとを言うつもりもない。
いくらあっても困らない。
すこしでも稼げるうちに稼ぎたいと思う。
そのために必要な客は離さないでいようと決めたんだ。


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| 「僕の一日」  | 00:43 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

なんだかミステリタッチになってきましたね。
彼女が男嫌いになった原因はいかに?

男嫌いといっても根の浅いやつ。
学生時代にもっさりしていて、ブスだとかデブだとか、おまえみたいな女に好かれたくない、と言われたとか。
中高校生くらいの男の子って、平気で残酷なことを言いますものね。

そのような原因での男嫌いは、優しい男性に愛されたら治るかもしれないのですが。

で、英語の件。
イギリスに行ったときには、日常会話くらいだったら不自由しない連れがいたので、すべておまかせしていました。

バス停にひとりでいたら、誰かに英語で話しかけられた。なにか質問されているのはわかる。
「私は旅行者ですからわかりません」と言えばいいのはわかる。でも、英語では言えない。
私はひたすら、ノーノーノー!! と叫んでいました。

ホテルでの朝食をひとりでオーダーできたとか、スーパーでひとりで買い物できたとか(袋はいるか? と訊かれているのが、三回目くらいでやっとわかりました)、そんなのが嬉しかったという、私の英語のレベルはそんなのです。

語学と美術と音楽の才能はゼロです。
写真を撮る、物語を作る、なんてことだったら、下手でもいいんだったらできますけど、この分野は下手でよくてもできませんねぇ。

2014.05.29(Thu) 00:56 | URL | あかね|編集

あかねさま
いつもありがとうございます!

英語が出来るって良いですよね!憧れます。
何を言っているのかなんとなく分かっても、その答えを英語で言えない!
単語を適当に並べても「???」という顔をされてしまうし、
発音が悪いのかと思って紙に書いても「???」。
あとはジェスチャーで何とかする!という感じが多かったです。

以前仕事中に声をかけられ、とても聞き取りにくい発音&ものすごい早口?で何を言っているのかまったくもって分からず、
相手もこっちが分かるようにゆっくり話すなどは一切してくれず……なんてときに、
「一年留学していた」という人に助けを呼んだことがありました。
すると英語がペラペラペラペラとその人から流れてきて……す、すごい!!!ってなったときがありました。
その人は見た目が、ラップやレゲエやってそうで(実際はしていません)、
ボンバヘッ!みたいな髪型でダボダボのズボンを履いていて、
「高校は遊んで行ってなかった!(遊んでいたので留学させられたらしいです)」とか言っていたので、
普通に会話している姿を見て「人間、学歴や見た目じゃない!!」と確信したのでありました。
あまりの感動に「すごいすごい!英語の資格持ってるの?」と聞くと、
「話せるけどスペルまったく分かんないから無理」との回答……もったいない……。

私は英語よりも運動の方が酷くて……それはもう教師が驚くぐらいに……。
冗談でもなくバスケでパスを顔面でキャッチ(鼻血は出してません)、
バレーでサーブをしたら味方の背中に直撃(以後、私がサーブのときは全員が振り返るように)、
校庭のトラックでマラソンをすれば当然ビリで、
しかも前の人との差がありすぎて私が走り終わる頃には全員が整列して待っているという事態に。
(走っている途中、まったく知らない男子に「がんばれ~笑」と憐れんだ声で言われました)

こっちは必死でやっているのですが回り方見たら「なにやってんの?」という事が多々。
酷い運動音痴ですがなぜか平泳ぎ(クロールは沈む)と縄跳飛びだけは得意でした。

運動が駄目な代わりに手先は器用で細かい作用はとても得意です。
ノコギリやはんだごて等の道具を使うのが大好きですが、
裁縫はあまり好きではありません……「男だったら良かったのに」と良く思います。

男嫌いの歩はこのあとも出てきますのでどうぞよろしくお願いします。


2014.05.31(Sat) 13:42 | URL | ハル|編集

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