秋の一日 4

4

ホーム中央に戻り、電車を待った。
すぐ隣に立ってくれている人の顔を盗み見る。

優しい目。

安心する。

ずっとこうして一緒に立っていたい。

なんてそんな願いは叶わず、ラッシュ時は次々と電車がくる。
がっかりしたのと同時に、少し怖くなった。
またあの男がいたらどうしよう。
それか別な誰かが…。

手のひらにじんわりと嫌な汗を感じる。

プシューというドアが開く音と同時に、人が吐き出され自分が乗る瞬間が来た。

鼓動が速くなる。
足がうまく動かない。

そのとき。


ふわりと優しく私の手を握って、電車の中へと引っ張ってくれる姿が目に映った。
手から伝わってくる温度は、私を安心させてくれる。

「ココなら少しはマシだと思いますよ」

頭の上から声がして顔を上げると優しく笑う顔があった。
気がつけば車両の隅のところで、痴漢に遭わないよに、潰されないよにと、
私を窓側の壁を背に立たせて自分は周りに背を向け、
この満員電車の中でわずかながら隙間を作ってくれていた。


「…すみません…ありがとうございます」


少し声が震えた。
ちゃんと聞こえたかな?

こっちを見て小さくうなずくと、握ってくれていた手をゆっくり離し、
顔を上げ周囲に目を向けた。
あの痴漢がいないか確認してくれているのかな。

なんだろう。
この安心感。

ずっとこのままならいいのに。

でもたった3駅だからすぐに着いちゃう。
もう少し先まで行ってもいいのに。

こうして隣にいられるなら。


カバンを持つ手に力が入る。


もう、何考えてるんだろう、さっきから。
顔が熱い。

どうか気づかれませんように。


にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

| 「僕の一日」  | 17:22 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

大阪の電車にはたいていが女性専用車がありまして、そこに乗っていれば痴漢には遭いませんが、こういうときめきの出会いもありませんね。

ハルさんのお住まいのあたりにも、女性専用車ってありますよね?
あれはあれでドラマがあるんですよね。

ただひとり、女性専用車に乗っている男性。
「お客さん、女性専用車なのでご協力を……」
「女性専用車ってなんなんですかっ?! 私はそんなものは認めませんっ!! 差別ですっ!!」
と駅員さんと喧嘩していたり。

男性がいないのでおおっぴらに化粧したり、ちょっとお行儀も悪くなったり、というようなこともありますね。

この主人公の女の子、可愛いな。
ここからはじまるラヴストーリィ、ではないんですよね? どうなるのかな。

2014.01.10(Fri) 16:17 | URL | あかね|編集

あかねさま
いつもありがとうございます。

通勤ラッシュ時に電車に乗ったことがないのですが、
たぶん女性専用はないと思います。たぶん・・・・。
地下鉄も区別はないです。
なので混んでるときは、もうそれは辛いです。

痴漢されると思っているわけではないのですが、
なんというか、おっさんの近くはいやですよね。
汗だらだらとか、息が荒いとか・・・気持ち悪いです。。
なるべく女性がいる方に逃げていきます。

電車での出会いって、なんだかときめきます。
とはいえ乗り物酔いが激しい私は、電車でも地下鉄でも数駅過ぎると
「・・・・・おえ」と気持ち悪くなり、ものすごいしかめっ面で目的地まで我慢します。
周囲の人はきっと「こわっ」っと思いながら見ていることと思います。

電車での素敵な出会いは実際に自分に起こる可能性はまずゼロに近いので、
想像の世界の人たちに夢を託して・・・・。

この女の子には後ほど本編の方でも出てもらう予定です。

2014.01.15(Wed) 00:31 | URL | ハル|編集

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://harl.blog40.fc2.com/tb.php/645-8a597270

| main |

プロフィール

ハル

Author:ハル
  ↓ぽくっと↓

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
  ↑ぽちっと↑

このサイトに使用されている
画像、文章、その他を無断で掲載、転載、
複製することを禁じさせていただきます。

リンクフリーです

ブログ内検索

QRコード

QR

フリーエリア