僕の一日 55

「彼女を作ると大変だよね」


初めて聞く斉藤さんの恋愛観。
斉藤さんが女の人にベッタリしているところは想像ができない。

彼女だった人たちも依存というより、斉藤さんみたいな人が彼氏だと、
嫌われないように必死になってしがみついてしまうんだろう。
捨てられたくないし、認められたし、
その感情が斉藤さんにとっては重たく感じてしまうのかもしれない。

それでも斉藤さんみたいな人は滅多にいないから、
諦めきれない人がさっきみたいなストーカーになってしまうのだろうか……。

想像したら背筋に悪寒が走り、手にしていたグラスがわずかに揺れた。

自分だったら怖くて耐えられないかもしれない。

『ちなみに今みたいなことってよくあるんですか?』

「うーん……いまの電話の人はかなりキテるけど、
 ほかの人は何度か断れば次第に諦めてくれるかな。
 すんなり諦めてくれた人は…いなかったかな?」

『……ちなみに何人と付き合ってたんですか?』

「えーと……何人だろう」

そういうと指折り数えだした。
指で数えないと分かんないぐらい、たくさんの人と付き合っていたようには見えない。
どっちかというとひとりの人をずっと大事にするタイプに見えたのに。

「それって単に付き合ってただけも含む?
 それともヤることヤったのを含む?」

『……ヤったので……』

斉藤さんの口からそんな言葉出てくるとは。
そりゃ斉藤さんだって男なわけだし、付き合えばそういうことになるだろうけど、
なんていうか、あまり聞きたくなかった言葉かもしれない。

「一桁ではないよね」

『そんなに?!』

衝撃的な言葉に声が大きくなる。

「うん、なんというか来る者拒まずってとこがあって、
 彼女がいないときに告白されれば、だいたい付き合ってたし、
 まぁ、面倒になってすぐに別れることが多かったけどね。
 あ、さすがにお客さんと付き合ったことはないよ」

『もしかして今まで全部告白されて付き合ってたとか?』

「うん。告白したことない」

『……付き合ってる期間としてはそれぞれ短いんですか?』

「うん、短いね。
 だいたい2ヶ月ぐらいかな。長続きしないんだよね」

なんだかすごいことを聞いている気がする。
急に斉藤さんが身近に感じてきた。

『じゃぁ、最高でどれくらい続いたんですか?』

「半年だよ。短いでしょ?」

伏せ目がちに言った。

『いえ、そんなことないです』

外に視線を写し、何も話さなくなった斉藤さんを前に居心地の悪さを覚え、
飲みたくもないのにドリンクをおかわりしに行った。
斉藤さんの分もとってこようとすると、「俺の分はいらないよ」と先に言われてしまった。


ボタンを押し、緑茶が注がれるグラスを見つめる。
ふと横目で座る斉藤さんを見ると、遠巻きに見る店員の視線が目に入った。


『・・・・・・』


もしかしてさっきの付き合った人数は嘘なんじゃ……。

そんな風に言っておけば、会話が聞こえたスタッフからほかのスタッフに伝わって、
自分を嫌ってくれるかもしれないからと、そんなことを考えて言った言葉じゃないのか?

席に戻りそのことを小声で聞いてみた。
すると、

「いや、そういうつもりないよ。本当のことだし」

と、同じく小声で答えてくれた。

めまいを覚えそうになったが、バレない様に笑顔でその場をしのいだ。

バレてないかは不明だが。


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| 「僕の一日」  | 16:40 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

なんと申しましょうか。
私のような平凡な人間は、斎藤さんみたいな男性に恋しちゃいけないな、ですかね。
ある意味、芸能人に恋するようなものですよね。
芸能人だとむこうはこっちを知らないから、二次元恋愛みたいな片想いで、そのほうがまだ楽かもしれません。

斎藤さんに告白してつきあっていただいて、嫌われないように必死で、彼に選んでもらおうと、特別な女だと思ってもらおうと、涙ぐましい努力をしていた過去の女たち。

けれど、誰も特別にはなれず、あのときにつきあってた女は……あれ? 誰だっけ? 名前忘れたなぁ。あの子とこの子がごっちゃになるなぁ、なんて思われていたりして。
切ないですね。

その女性たちの気持ちがひしひしと伝わってくるようで、このあたりのパートは有利くんよりも、斎藤さんの過去カノたちに思い入れてしまいます。

やっぱりね、恋はするよりもされたほうが得ですよ。打算的ですが。

2013.11.17(Sun) 18:16 | URL | あかね|編集

あかねさま
もし斉藤さんみたいな人がいたとして好きになったとしても、私は告白しないです・・・たぶん。
あかねさんの言うとおり、相手に恋をしてもらっていたとしても、
そばに立ってるだけで周りの視線や自分との違いに耐えられそうにないです。
妄想している方が幸せだと考えてしまうと思います。
観賞しているだけで満足デス。

この食事中の話で斉藤さんのイメージが一気に悪くなった気がしますが、
本人はそれすらもプラスにとらえてくれると思っています。

2013.11.18(Mon) 23:32 | URL | ハル|編集

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