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僕の一日 54

定食を食べ終わり、食後にドリンクバーの緑茶を飲んでいると、
斉藤さんがポケットから携帯を取り出した。


「もしもし?お疲れ。うん……うん……」

どうやら会社からのようだ。
時間的にはまだ閉店前だから、金銭ミスではないだろう。

「そう……」

急にトーンが下がった。
何かあったのだろうか。

「分かった。代わってもらえる?」

眉をひそめ、ため息をつく。

「もしもし……」

そう言ったあとに斉藤さんが持つ携帯から女性の声が聞こえてきた。
何を言っているのかは分からないが、怒鳴り声に近い気がする。
もしかしてクレーム?

数センチ耳元から携帯を話すと、空いている手で顔を覆い、深くため息をついた。

「あのさ、いま店にいるんだろう?周りの客のこと考えろ。
 それから二度と店にも来るな。
 今度来たときは業務妨害で訴える。
 今まで送りつけられた手紙もとってあるんだ。
 お前がしていることは3年以下の懲役に値する。
 そういうことになりたくなければ二度と俺に関わるな」

一気に言うと、そのまま通話を切った。
3年以下の懲役って・・・。
あっけにとられる俺に気づいて「ごめんごめん」と笑った。

『どうしたんですか?クレーム?』

恐る恐るきくと、首を横に振った。

「彼女」

『え?!』

「前の」

『あ…』

あまりの驚きに開いた口がふさがらない。
これだけキツイ口調を聞いたのは初めてだったし、彼女の話も初めて聞いた。

「昔付き合ってた人だよ。もう関係ない。
 なのにいまだにこうして付きまとってくるんだよね」

『お店に来てたんですか?』

「うん。俺の今の住んでる部屋や携帯番号しらないから、
 店に電話をかけてきたり 直接来たりするんだよね。
 今日もお店に来て俺を出せって聞かなかったらしい。
 相沢は俺が休みだって言ったみたいなんだけど、どうにも分かってもらえなくて、
 しかたなく電話をよこしたというわけ。
 有利くんは遭遇したことない?」

『斉藤さんあてのそういう電話受けたり、色々聞かれたりしたことはありますけど、
 こういうストーカーっぽいのはないです。
 手紙って?業務妨害ってなにしたんですか?』

「店に手紙が送られてきてね。
 ヨリを戻さないと店の悪い噂を流すとか、火をつけるとか、色々ね」

『・・・・・・』


テレビで聞くような内容が自分の目のまで起こっている。
怖すぎる。

『一人暮らししてる部屋も知らないってことですよね?』

「うん、一人暮らし始める前に付き合ってたから」

『いつですか?』

「ずいぶん前だよ。大学の時。1ヶ月で別れたけどね」


斉藤さんの学生時代ってどんな風だったんだろう。
今きっとたくさんの人から告白されたんだろうけど。

「ダメなんだよね。付き合う前はよくても、
 すぐにグズグズになってそれが嫌になってしまうんだ」

『グズグズ?』

「うん。基本的に自立してる人が好きなんだけど、
 付き合うとみんな俺にベッタリになって、面倒になるんだよね。
 なんで電話がないの?とか、会いたいとか……。
 毎日電話とか、毎日会うとか、そういうのダメなんだ。
 他人に依存しないと生きていけないみたいなのはちょっとね」

『依存、ですか』

「うん。きっとキャリアウーマンみたいに生活もなにもかも自分でできて、
 他人と自分をきっちり区切って、ひとりで平気っていう人が向いてるんだよ、俺は」

『そうなんですか』

「有利くんだってお客さんにモテるでしょ?
 ほら、バレンタインのときなんかチョコもらったりしてたよね?」

『あー、あれは……うーん、そういうことありますけど、
 斉藤さんほどじゃないですよ』

「いやいや、俺だって有利くんのこと結構聞かれるよ。
 下の名前教えて欲しいとか、携帯番号やら誕生日やら、
 なんでもいいから教えてください!って。
 もちろん教えてないけど」

『ははは、ホントになんて答えたらいいのか……。
 正直、そういうのどうしたらいいのかなぁって思うんですよね』


突然知らない相手から告白されても、正直困ってしまう。
客と思えば冷たい対応も出来ないし、
でも期待を持たせるようなことも言えない。
ただ「すみません」と言うしかない。

女性は色々扱いが大変だということは、良くわかっているつもりだけど。


「まぁ、その気がないなら、丁寧に断るしかないよね。 
 それでお店に来てくれなくなったら仕方ないよ。
 仮に彼女がいて、そういうの知ったら嫌な気持ちになるだろうし、
 なるべくそういう方にいかないように気をつけてはいるけど難しいね」


斉藤さんに好きになってもらえる人はきっと幸せだろう。
優しくてとても気が利くし、いつも穏やかに笑う。
ピンと伸びた背筋に自信に満ちた目。
こういう人のそばにいれば、自分自身が成長できるだろう。


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| 「僕の一日」  | 23:53 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

この会話、もてない男性が聞いていたら怒るだろうなぁ。
むききききーっ!! って。
前にそんなシーンを書いたことがあるのですよ。

フォレストシンガーズストーリィの脇役、徳永渉と金子将一、もてもてのふたりが、「もてない男ってどんな人生送ってるんだろ」「俺たちはそんな経験ないからわかりませんね」という会話をしていて。

横で聞いていた無関係な他人がいじけるという。
そのシーンを思い出してにやにやしてしまいました。

しかし、もてるひとにも苦労はありますよね。
斎藤さんみたいな男性は彼女を作らず、山の奥で隠遁者暮らしをするべきです。
私もひがんでます。

2013.11.03(Sun) 18:07 | URL | あかね|編集

あかねさま
先日はコメントを消してしまってすみませんでした!
二度とないよう気をつけます!!!


斉藤さんみたいな話を聞いたら「何言ってんの?この人…」ってなりますよね。
本人はずっとモテてたからそれが普通なわけですが、
世の中はそれが普通とは思っていないですからね。

学生の頃「写真撮ってきて!」と頼まれたことがありました。
相手はイケメンと人気の人でした。
でもよく考えると知らない人に写真を勝手に撮られるって嫌ですよね。
いま考えると申し訳ない気持ちになります。

「もてない男ってどんな人生送ってるんだろ」はスゴイですね。
モテすぎて困ってる感が出まくってます。

モテるのは別にいいですが「モテて当然」と思っている人を見るとイラッっとしますね。
「いつか痛い目にあうぞ、むしろあってくれ」と思います。
・・・・これもひがみですね・・・・・・。


2013.11.05(Tue) 03:30 | URL | ハル|編集

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