夏の一日 5

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「そこです」

改札をぬけてすぐ彼が指差した先はには見慣れたコーヒーショップがあった。
確かに一番近い休憩場所だ。

店に入ると「いらっしゃいませ」という声と共に、店員たちの視線が一点に集中した。
男一人が抱えられて店に入ってくれば、当然のことでもあるが・・・・・・。
落ち着いた空気が流れる店内がわずかに緊張して、それを感じた客たちが視線を向けてきたが、
彼は気にすることなく店内を見渡した。

「お客様、どこかお具合でも・・・・・・」

心配そうに小走りで来た女性店員に「大丈夫です。二人掛けのソファー席空いてますか?」と質問し、
「こちらです」とパタパタと奥へ向かう店員の後ろをついていった。


ゆっくりとソファーに俺を座らせると「お冷頂いてもいいですか?」と、
後ろでソワソワしている店員に一声かけた。

お冷などは全部自分でやらなければいけないセルフスタイルカフェで、
店員に水を持ってくるようお願いするということ。
それは「私はお客様であるあなた方を心配しています」と掲げて、
「なにかお手伝いしましょうか?」という店員の気配りと無下にせず、
なおかつ店員を満足させるには十分だった。


人のあしらい方が上手い。
駅員にも同じようにサラリとかわしていた。


「お待たせいたしました」とふたり分のお冷を持ってきた店員に、
「すみませんが、ここでペットボトルのジュース飲んでもいいですか?
 僕はドリンク頼みますので」と彼が確認した。

「大丈夫です。ゆっくり休んでください」という一言に、
にっこりと笑顔で「ありがとうございます」とお礼の言葉を言った。

その店員の顔がみるみる赤くなるのに、当の本人は気づいているのかいないのか。
レジカウンターでドリンク注文を受け会計を済ませる間、
その女性店員の視線は終始彼を追い続けていた。

まぁ、あの顔で微笑まれたら、一発だと思うが。

そうやって自分も見続けて気づいたのは、会った時に思った以上に細いということ。
手足が長く、バランスのとれた骨格をしているから騙されそうになるが、かなり華奢な体つきをしている。
白い肌のために、なおさらそう感じるのかもしれないが。

ほどなくドリンク片手に戻ってきた彼が「あれ?調子良くなりましたか?」と、
明るい声で話しかけてきた。

「あ・・・・・」

そういえばかなり頭が回っている気がする。
涼しいところに入って暑さが落ち着いたことで、調子が戻ってきたのか。


「そうみたいです。ありがとうございます」


ペコリと頭を下げ、さっきもらったポカリをカバンから取り出し、
一気に半分まで飲み干した。


「その調子だと大丈夫そうですね」と安心した顔で彼が笑った。


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| 「僕の一日」  | 17:55 │Comments0 | Trackbacks0編集

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