夏の一日 4

4

たくさんの足音とざわめき。
入れ替わり停車する満員電車にアナウンス。

人の形も熱も声も、すべてが混ざり合い溶けだしてしまいそな7月。
そこに居るだけで汗が吹き出るような暑さは、理由もない苛立ちすら覚えてしまう。


そんな音はゆっくり遠ざけて、耳も目も塞いでしまおう。

でも目を閉じると、熱い熱い、炎が近づいて……。



地面が突然消えたように身体の力が抜け、ベンチからそのまま崩れ落ちそうになったのは、
電車から降りてからどれくらいの時間が経ってからだったか。

眠っていたのか、一瞬気を失ったのかよくわからなかった。

隣に立っていた彼が間一髪で支えてくれなければ、
今頃コンクリートに顔面をぶつけていたかもしれない。

鈍い音を立ててメガネが落ちたが、手を伸ばすことも出来ない。

ああ。
重症だな。


「大丈夫ですか?」と落ちかけた身体をベンチに戻し、メガネを拾ってくれた彼の時計に目をやる。
アパートを出て2時間以上過ぎているのがわかった。
これ以上はこの人に迷惑をかけられない。
どこかのファミレスにでも行って涼もう。


「スミマセン・・・あの、もう大丈夫です」


そう言って立ち上がろうとしたが足に力が入らない。


「歩けますか?ここの改札を出てすぐにお店があるんで、そこで少し休みましょう」


曇りない声が頭の中に入ってくる。


「いえ、これ以上は・・・・・・」

「しかしひとりで歩けるような状態でもないですし、俺も少し休みたいので」


言い終えると同時に彼の細い手が目の前に差し伸べられた。


「改札まで大変かもしれませんが、階段を上ってしまえばすぐですから」


いま頼れる唯一の手を払いのける理由もなく、その手を掴んだ。
額ににじむ汗が嘘のように真っ白な顔は生気を失っているように見えた。
俺に気を遣ったのではなく、彼自身も体調が悪いようだった。


彼の肩に手を回し支えられながら何とか改札口まで向かうと、
ひとりの駅員が走ってきて、「具合悪いですか?」と声をかけてきた。
彼はすかさず「大丈夫です。そのへんで休みますので」と言いながら笑顔で頭を下げ、
自動改札機にPASMOをかざした。

「切符ありますか?」という声に、ポケットから携帯を取り出し、
「これです」と差し出した。

ピッという音を確認し、俺を抱えたまま改札機を通った。

せっかく駅員が声をかけてくれたのだ。
そのまま俺をあずければいいなずなのに、どういうわけか彼はそれを断った。
疑問に思いながらも安心している自分がいた。



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| 「僕の一日」  | 18:14 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

涼しげなひと
六月になると憂鬱です。
梅雨は嫌い、梅雨が明けると夏が来る。暑いのはなによりも嫌いだから、夏は大嫌い。
夏がすぎると秋になり、秋になると一年がすぐ終わってしまう。
うきゃあ、また年を取る!!

というわけで、一年の後半は嫌いな私は、主人公さんの気持ちに共感できます。意味はちがっているのでしょうけど。

そんな大嫌いな夏に、涼しげなひとが登場するといいですね。
夏よりも冬の好きな私は、人間も断然、クールな印象のひとが好きなのだと改めて思いました。
この、手を差し伸べてくれている男性が斎藤さん……ってことはないんですかね。
斎藤さんはクールでもないのかなぁ。だけど、斎藤さんはとっても気になります。

2013.06.10(Mon) 13:33 | URL | あかね|編集

あかねさま
私も梅雨から夏がダメです。
かといって冬だと極度の寒がりのため辛く、春は花粉症に泣く。
平穏なのは秋ぐらい?
これからの季節はなにより湿気が嫌ですね。
天パなので外に出ると湿気を吸って、全然違う髪型になるんです(誰?っていうくらい)
細いから湿気の重さでぺたんこ……CMでよくやってる「スプレーしてふんわり♪」なんてなるわけもなく。

そんな頭なのでとにかくストレートヘアで黒髪を見ると、羨ましすぎて凝視してしまいます。
斉藤さんは最初、くせ毛という設定にしてたんですが、
「ここはやっぱりストレートで!」と、自分の願いも込めました。
長さは全盛期の窪塚洋介ぐらいで(SOSのドラマに出てた頃)

斉藤さんはクール・・・んんー、どうでしょう??
あ、でも!クールです(笑)
このお話の中では一番クールになる予定です!

2013.06.13(Thu) 01:04 | URL | ハル|編集

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