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僕の一日  38

斉藤さんが湯呑茶碗のお湯を急須に入れふたをし、「さて」と口にしてから台所へ向かった。
レンジを開けてお弁当を取り出し、もうひとつを入れてボタンを押す。
温め終わったお弁当と割り箸2膳をテーブルに置き、またレンジの前に戻り、
音が鳴ると同時にドアを開けて取り出し、嬉しそうな顔で戻ってくる。

「ここのお弁当おいしいんだよね。結構お世話になってるんだよ」

パッケージには見慣れたマーク。
仕事先の店が入っているビルを右手に曲がってすぐのところにある、老舗のお弁当屋。
値段はコンビニ弁当よりはちょっと高いけれど、とにかくおいしい。
社員食堂に来ないで店のバックルームでお昼の休憩をとるときに、
斉藤さんがよく利用しているのはスタッフみんなが知っている。

急須に入ったお茶をふたつの湯呑に入れ、「はい」と差し出してきた。

『斉藤さんて一人暮らしですよね?』

「うん。そうだよ」

『料理はしないんですか?』

「昔はけっこうしていたけど、最近さぼりがちかな」


料理が出来る男。
モテる要素がありすぎる。


「なによりここのお弁当が好きなんだよ。いただきます」

割り箸を割って野菜スープにを呑んで「お、いけるね」と言い、お弁当を食べ始めた。

『はっ!』

「え?」

『すみません!』


またやらかしてしまっている。


『すみません。直接床に座らせて。ソファーに座ってください』


自分だけソファーに座って先輩をそのまま正座させている。
なんでもっと気遣いができないんだ自分は。

「いいの?じゃぁ失礼するよ。それよりそんなに気を遣わないで」

隣に座りながら笑った。

「おまけに俺と話すとき少し構えてて、“あっ”とか“えっ”とか、ビックリした感じの言葉が多いよね。なんで?」

『それは、緊張するっていうか、なんていうか・・・』

「緊張?なんで」

『なんで…だろ。…芸能人みたいだから?』


正直に答えると目を丸くしてこっちを見た。


「なにそれ。俺が芸能人?」

驚いた声で聞き返してきた。

『あー…顔もかっこいいけど、仕草とか立ち振る舞いとか…あとオーラ?』

「芸能人オーラ?そんなのないよ、俺一般人。それに君がかっこいいとか言うと、
 嘘っぽいよ。そんなきれいに整った顔の人に言われてもねぇ」

その言葉に即座に反論する。

『きれいじゃないです!そんなこと…』

「…人に好かれるのが苦手?」


声のトーンを少し落として聞いてきた。
この人は彼女と似ていて、どこか見透かしてくる。


『みんなが善意で言ってるわけじゃないだろうし、別に俺なんて…』

「こんなのがいいなんて、ありえない。とか?」

視線をテーブルに落とし、懐かしむように穏やかに言った。

「そんな風に思っていた頃もあったよ、俺も。
 見た目で色々言われることにうんざりしていた。
 でもまぁ、整った顔に産んでもらったんだし、変えようもないし、
 いっそのこと受け入れてこの顔を利用しようと思ったら、楽になったよ。俺はね」

『……』

確かにこの顔を使ってお金を稼いでるのは事実。
否定するも受け入れるも自分次第。

「羨ましがられることも慣れたかな」

『慣れるもんですか?』

「うん。そのうちね」


目を細め、うなずきながら笑った顔は、やぱり誰もが羨む顔。
精神的に大人な分、それが顔にも出ている。
自分もこんな風になれるだろうか。


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| 「僕の一日」  | 16:50 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

ちょっと似てるかも。
何が?
はい、自分自身に関心のないところが、優ちゃんと。
意味合いはちょっとチガウけど。
きっと、自信がないんだな、と思う。自らの存在に。
優ちゃんが、‘樹’が愛してくれるから、自分自身を愛せるようになったように。
きっと、命の価値は『愛』を得たら生まれるものだろう。
そこが切なくも美しいと感じる。

>画が浮かぶようになりたい!!

>樹が想像できるみたいに!!!

↑樹は、確かにハルさん、いろいろ想像してくださいましたねぇ。
屋台の法被姿とか!
やつは、なんというか、個性というか性格が強烈だから、イメージが浮かびやすいんだろうか(・・;
fateには、誰一人、訳分からん人物でしかなくって、画が浮かんだりはしないんだなぁ・・・

2012.08.05(Sun) 16:50 | URL | fate|編集

fateさま
> そうですね。
> タイプ違うけど、なんか似てるかも。
>
> ・・・・あぁぁっ!!
> でも樹のオーラに押し負けそう!
> どうがんばっても樹にうまく丸め込まれそうだ!
> 動物が似合いそうっていうよりも、ノラ猫とかをこっそり追いかけていそう・・・・。。。
>
> 私の中ではかわいいはずなのに。
> なぜでしょう。
> 樹と並べたら影が薄そうで・・・色んな意味で・・・。
>
> そう、なんていうか全体的に色が薄い感じだ。
>
> ガンバレよ、主人公。

2012.08.22(Wed) 02:14 | URL | ハル|編集

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