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僕の一日  30

彼女に初めて会ったのはバイトが決まって初めて出社した日の昼。
給料絡みの説明も含めて、店長と社員食堂で話をしていたときだった。
「ご飯食べながらでごめんね」と言って、日替わり定食を手に席についた店長の向かい側に座った。
簡単な勤怠の説明を聞き、雇用契約書などいろいろ記入していた。
その間にもくもくとご飯を食べる店長の隣に、足を止めた人がいた。
それに気づいて顔を見ると、きょとんとした顔で女の人がこちらを見ていた。
隣に人がいることに気づかず、ひたすらご飯を食べる店長を見て、
「あの・・・」と小声で話しかけると、「なに?不明なとこあった?」ととぼけた顔をして書類をのぞいてきた。
そのやり取りをみて、女の人が何か納得したような顔でうなずいた。

「はじめまして。新しく入った方ですよね。私も同じ店のスタッフです。えーと・・・」

お弁当を片手に挨拶をしてから、俺の首にさげてあるネームを見て少し困った顔をした。
まぁ、いつものことなんだけど、読めないなんて。
間違いなく呼んでくれた人はいまのところいない。

『はじめまして。ゆり、といいます』

椅子から立ち上がって頭を下げると思わぬ言葉がかけられた。

「へぇ、珍しい苗字。いいなぁ」

『え?』

顔をあげると嬉しそうに笑った彼女がいた。

「そうだよなー。石川なんてどこでもいるし、誰も読み間違えないよな」

そのやりとりを見ていた店長がわざとらしく言った。

「放っておいてください・・・あ、石川といいます。よろしくお願いします」

ペコッと頭を下げた姿を見て、また自分も頭を下げた。

「石川、もういいから座れ。俺が落ち着かないだろ」

「いいんですか?大事な話じゃ・・・」

「いいの、お前と同じアルバイト扱いだから、給料も似たようなものだし」

「じゃぁ、となり失礼しますね」

そう言って店長の隣に座ると、お弁当を広げた。
いつのまにか食べ終えていた店長が、コップの水を一気飲みほして、
「ふぅ」と一息つくと、書き終えた書類を確認し始めた。

「石川は1年先輩。同じアルバイト扱いなんだけど、
 業務内容は全部分かってるし、社員いないときは彼女に聞いてもらえれば大丈夫だから」

書類に視線を落としながら、店長が言った。

『はい、わかりました』

店長の隣に目をやると、きれいにお弁当を食べる姿があった。
いいところで育ったか、そういったところに顔をだす機会がある人なのか、
箸の持ち方から、姿勢、食べ方まで、全部が完璧に見えた。
自分で作ったと思われるお弁当のおかずがとてもおいしそうだ。
きれいに詰めてある。

なんだかきれい尽くしだ、と思いながら、
ぼぉーっとその姿を見ていると、視線に気づいたのか、ふと顔をあげた。
慌てて視線をそらしたが、あまりにわざとらしかった。

「え?何?」

彼女が戸惑った声で言った。

「なに?どうした?」

書類を持つ手はそのまま、店長が彼女に声をかける。

「いえ、なんでもないです」

そう言って、またお弁当を食べ始めた彼女を見て、「なんだ?」と呟いてから、
書類を整えてファイルにしまった。

「書類はこれで全部。不備はないから大丈夫。ありがとう」

『いえ、ありがとうございます』

「じゃあ、お店に行こうか。今日は他に2人のスタッフが出社してるから紹介するよ」

トレイを持って立ち上がった店長を見て、慌てて席を立つ。
顔をあげた彼女に一礼して店長の後ろを歩いて社員食堂をあとにした。


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| 「僕の一日」  | 19:26 │Comments4 | Trackbacks0編集

コメント

せめて架空の中の人たちには幸せになって欲しいですね。
↑分かります、分かります、分かります、それっ!
基本的に徹底的な悲劇は描かない、いや、描けないんだけど、完全なるハッピー・エンドにしないこともたま~にある。けっこう「え? そんなっ」ってことが…
だけど、たった一か所でも、救いを与えてしまう。
一番の‘核’の部分を救ってしまう。
ヒトって、その『核』さえ持っていれば、そこさえしっかりしていれば、生きていける。
取り返していける。
そう思うから。

その‘核’のような部分に、石川さんって関わってくるんだろうな。
その部分を彼女だけが分かってくれているのかもな~
なんて。

ううう、優ちゃん。
そうなんすよ。
あまりに放りっぱなしだったもなぁ。
今夜からなんとか気合を入れて、続きに取り掛かります!!!
(あああ、どうしよう、宣言しちゃった~~~)

2012.04.19(Thu) 16:46 | URL | fate|編集

その宣伝期待シマス!!!
最初から読み直してみて、また違う目線から見てみたいって思います。

・・・幸せに、とかいいながら、どうみても幸せな日々ではない人物たちに、
「ゴメンなさい」。。。

2012.04.24(Tue) 23:17 | URL | ハル|編集

使い古しですが
他人が近くにいるのに孤独。
というのは、まるで誰もいないから孤独である以上につらい。
本当にひとりぼっちだったらそれはそれでいいけど、みんなに仲間外れにされるってのは我慢できないな、というのはありますね。

主人公(ゆりって苗字ですか? 由利さんとかってありそうですね)は自分からみんなと距離を置き、なのにやっぱり寂しかった、なんですよね。
わかる気はします。
私はひとりが好きですけど、勝手なときには誰かと触れ合いたくなったりしますから。

2013.01.14(Mon) 10:42 | URL | あかね|編集

あかねさま
ひとりで部屋にいるのは平気だけど、大勢いるところでひとりっていうのはツライですよね。
誰かが近くにいるからこそ、寂しいものなのかなぁって思ってます。
私もかなりひとりが好きです。
どこにいくにも基本はひとり。
寂しいとか感じないんですよね。むしろ気楽でイイと感じるほうで。
でもたまに夜中に寂しくなり、携帯を手にするも「寝てるかも」と思って我慢してます(笑

彼の苗字は当て字です。
由利という本当にある苗字を使おうかと思ったんですが、遊びの気持ちを込めて、有利にしました。
次の回に出てきます。

2013.01.20(Sun) 01:43 | URL | ハル|編集

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