僕の一日  20

綺麗な装飾で作られた空間。
多くのシャンデリアが光る。
複雑にカットされたガラスが多くの光源を散乱させる。

お店に合った高級ソファーとテーブル、グラスやスプーンにいたるまで、すべて社長が選んだものらしい。
あの人のセンスの良さがうかがえる。

2Fの隅からすでに多くの女性が来店していることを眺め、小さく息をした。

目を閉じ自分の中をリセットさせる。
ココで“有利”の名前を呼ばれることはない。
別の世界で別の人間。
本当の自分じゃない。

大丈夫。
今日も笑える。
笑顔を作れる。

ひたす自分に言い聞かせた。
そこに声がかる。

「直哉さん、指名が入っています。5番テーブルです」

『・・・・分かりました』

ウェイターに返事をして階段を降り、目的のテーブルへと向かう。
1階に足を着いた時にはすでに笑顔を作っていた。


『お久しぶりです』

5番テーブルの前に着き、にっこりと笑ってみせた。

「キャー!直哉!久しぶり!元気だった?!早く座って座って!!」

20歳になっていないのではないかと思うほど、無邪気な声で若い女性が両手を振った。
高校生でも通りそうな顔。

『僕は元気ですよ。京子さんも元気でしたか?』

笑ってみせると、グイっと腕をつかまれて、そのまま隣に座らされた。
その様子を見て、それまでいたふたりのスタッフが席を立った。
お決まりのこと。
一緒にいてくれると助かるのに。
色々と。

「もちろん元気!!毎日待っていたんだから!!」

穏やかに笑う。
嘘の顔。

8人は軽く座れるだろうソファーにふたりだけ。
テーブルの上には、すでに空のボトルが1本。
こうやってお金を落としてくれる人がいるからこそ、自分はここにいられる。

このために、笑う。


「最近全然居ないから、来るのやめようかと思ってたー!」

『すみません。いろいろバタバタしていたもので』

苦笑いをしてみせる。

「まさか女じゃないよね?」


マニキュアで光る指が腕に絡み付いてることに気づいても、
それを振り払うことはない。
黙って自分の中で見なかったことにする。
笑って受け入れてるふりをする。

『そんなこと僕があるわけがないじゃないですか』

「そーだよねー。私がいるもんねー」

『そうですよ』


あるはずがなかった。
誰かに心許すことなんて。

ずっとひとりで、そのまま死んでいくと思っていた。
何かを想うこともなく。


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| 「僕の一日」  | 21:37 │Comments4 | Trackbacks0編集

コメント

「伏線は最初に。」
↑んん? と思って6話まで読み返させていただきました。
はい、確かに。
そのときは、ちょっと引っ掛かりを感じたのに、そのままスルーしていた華麗な伏線が。

病気の状態とか、‘彼女’の存在感とかに心奪われて忘れ去っておりました。

いやいや、‘彼’は優しい良い子だからこそ、苦しんでいるのでは? と思います。

2012.01.27(Fri) 09:38 | URL | fate|編集

彼がもう少し我の強い人だったら、また別な感じになったのかもと、
最近思っています。

ある意味強いのかもしれないんですけど。

優しい人は、幸せになって欲しいなぁ・・・って思います。

2012.01.31(Tue) 18:58 | URL | ハル|編集

伏線
なんとなくひっかかりは感じたものの、私もスルーしてしまっておりました。
そーか、そうだったのか。

したくないこと、嫌いなこと、はしなくてよかったらいいのにね。
そうはいかないのが「人間」なんでしょうね。
猫になりたいと私もたまに思います。

ところで、大阪人のなにより嫌いなもののひとつは、アクセントの変な大阪弁です。
でも、たとえばアクセントの変な東北弁だったら、それがニセモノだとも気づかないでしょうから、耳にしみこむ「音」ってたいしたものなんですねぇ。

ハルさんの書かれている世界と「方言」ってものは無関係じゃない気もします。

2012.11.09(Fri) 10:13 | URL | あかね|編集

あかねさま
いつもありがとうございます。

やはり標準語でないとバレてしまうものですね。
「自分は標準語!」とか思ってがんばってみても、
長年のクセはどうしても抜けないものです。
おまけに標準語だと思って使っていた言葉が、
方言だったと大人になって気づくときも・・・・。
「ゴミを投げる」なんてのも、当たり前につかっていますが、
よく考えればありえない言葉ですね。
「いずい」とか・・・高校ぐらいまで標準語だと思ってました。

彼はきっと楽な道を選べない人なんだろうなぁ、と思っています。
やりたくないことも「やらなきゃ」と思い込んで必死なんだろな、って。

もっとうまく伏線をはれればいいのに、と未熟さを知るのです。

2012.11.15(Thu) 00:57 | URL | ハル|編集

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