僕の一日  18

薬のおかげで朝方には呼吸は落ち着き、そのまま眠ることができた。
目を覚ますとちょうど午後1時を回ったところで、
めずらしく空腹を感じ近くのコンビニへ向かった。

適当に選んだ弁当を手に、真っ昼間の太陽の日差しを浴びる。
少し、光が怖い。

この状態は良くないと分かっている。
本当はこのまま今日も眠っていたほうがいい。
そして明日は普通に出勤する。
それがいい。

そうしたいけれど。


家に戻ってレンジで弁当を入れ温める。
それを食べながら、このあと向かう場所を考えた。
箸が止まる。

『・・・自分で選んだことじゃないか・・・』

言い聞かせるように呟いて、弁当を全部食べた。

30分ほど休んでシャワーを浴びる。
虚ろな顔が鏡に映った。
濁った目を見るたび、嫌気がさす。

『大嫌いだ、お前なんか』

鏡に向かって言い放ち、思いっきり蛇口をひねって、
シャワーの水を鏡にぶちまけた。


いつもはそのままの髪も、この時だけはワックスをつける。
黒いスーツを着て、吸いもしないのにポケットの中にライターがあることを確認する。
普段とはまるで違う、黒いロングコートを羽織り、苦手な革靴を下駄箱から取り出す。

玄関のドアを明けると、夕日が傾き始めていた。
深くため息をついて、鍵をかけた。

向かう先は駅。
家路に帰る人たちに逆らいホームへと流れる。

夕方の駅は二つに分かれる。
家へ帰るために乗る者。
今から仕事へ向かう為に乗る者。

今の自分は後者だ。

目的地は日中のバイトとは逆方向になる。
ここからは少し遠い場所。

わざと遠い場所を選んだ。

自分を知る人に会わないように。
自分がひとりになれるように。

空いている席に目もくれず、車両の隅で立ったまま外を眺める。
どんな風景も、心揺らぐことはない。
どんな音も、遮断する。

そうやって1時間近く揺られ着いた場所は、バイト先の街中など比ではない、
光の絶えることのない大きな繁華街が広がっている。
帰りたい気持ちを抑え、内ポケットには彼女からのあの手紙を忍ばせて。

ゆっくりと光の中へ向かう。


にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

| 「僕の一日」  | 23:18 │Comments0 | Trackbacks0編集

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://harl.blog40.fc2.com/tb.php/595-1555bd8a

| main |

プロフィール

ハル

Author:ハル
  ↓ぽくっと↓

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
  ↑ぽちっと↑

このサイトに使用されている
画像、文章、その他を無断で掲載、転載、
複製することを禁じさせていただきます。

リンクフリーです

ブログ内検索

QRコード

QR

フリーエリア