僕の一日  12

気がつくと外は真っ暗だった。
睡眠薬が効いてぐっすりと眠っていた証拠だ。

ゆっくりと起き上がり、開けっ放しのカーテンを閉めた。
そこにチャイムがなる。
この鳴り方は・・・。

足早に玄関へ向かって、ドアを開ける。
心配そうな顔をして彼女が立っていた。

「具合はどう?」

仕事で疲れているだろうに、そんな雰囲気はまったくない。

そうやっていつも周りを気にしている。
今日だって俺の代わりにフルで働いているのに。
そう、フルで。

あれ?

寝ぼけていた頭がやっと動き出す。

『もう10時過ぎてる・・・よね・・・』

彼女がここに居るということは、仕事終わりということ。
部屋を片付けソファーに横になって、程なく深い眠りについたあと、
一度も起きることなく眠り続けていたのだ。
8時間以上は眠り続けていただろうか。
それだけ続けて眠ったのはいつ振りくらいか。

「質問の答えになってないよ」

『あ・・・すみません・・・えーっと・・・』

「もう夜の10時30分過ぎたよ。ごはん食べてないでしょ?」

『え・・・あ、今起きたとこ・・・・』

なんだか頭の中が混乱する。
まだうまく状況が飲み込めない。
なんでまた彼女は家まで来たんだろう。

「じゃあ今日は朝ごはんしか食べてないんだね?」

『・・・ヨーグルトを一つ・・・』

「それは食べたうちに入らない。 
 そんな事だろうと思ってお弁当買ってきたよ」

『あ、ありがと・・・ございます』

持っていたコンビニの袋を俺に差し出した。

普通なら仕事帰りに自分が降りる駅とは関係ないところまで来て、
弁当を買って持ってくるなんて、面倒くさくてよっぽどじゃなきゃやりっこない。
仮にも今日はフルで朝から働き通しなのに。
どうして彼女はこんなに・・・。

『・・・あ、すみません。立ち話させちゃって・・・』

肌寒い中、部屋に入れもせずにいることにやっと気づく。
いけない、まだ頭の回転が悪い。
かなり失礼なことをしている。

「気にしないでいいよ。私はあと帰るから」

『え?』

ドクンと心臓が脈打つのが分かった。

「じゃぁね、ちゃんと食べるんだよ」

彼女がくるりと振り返り、背を向ける。

くるりと。


背を向ける。
振り返る・・・帰る・・・。
彼女の姿がかすれていく。


『・・・待って』

小さな声で口走っていた。
反射的に発した言葉に自分でも驚く。

「え?」

彼女がこっちを向く。

『・・・あ、待って』

そのあとのに続く言葉が見当たらない。

『・・・あの・・・』

「・・・なぁに?」

『・・・・・お願いがあるんだけど・・・』

もしも可能なら。

「何?」

『少しだけ、時間もらえないかな』

「・・・終電までならいいよ」

時計を見ながら彼女が言った。

『ありがとう・・・』

肩の力がぬけるほど安心した。


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| 「僕の一日」  | 16:23 │Comments0 | Trackbacks0編集

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