僕の一日  10

家路に着く途中、コンビニでヨーグルトを買った。
食欲は無いが薬を飲む関係上、食べないわけにもいかない。
 
『彼女の月1早番掃除のとき、代わらないとなぁ・・・』

ぼやきながら左手首を見る。

何でだろう。
彼女の存在は。
そこに人がいることが、まるで嘘のように穏やかで。

今朝のことを思い出して、目を細めた。
記憶に浸ろうとした瞬間、意識を叩くように携帯が震えた。

メール受信だ。
誰からかは、画面を見る前に分かった。
ポケットから携帯を取り出し、メールを開いた。


“病院にちゃんと行った?
 今日はゆっくり家で休むように。
 店長には「熱がある」って伝えておいたから。
 だから無理はしないで寝てるように。
 仕事の事は気にしないでいいからね”


想像できたメールの内容だったが、「自分が休む」ということで発生する問題に気づく。
最短の方法で彼女の携帯へ電話をかけた。
3コール目で繋がる。

『・・・・あ、もしもし!』

「病院行った?」

『それは行きました。それより仕事!
 休んでいいって、俺の分は誰が働くんですか?!』

「大丈夫だよ、私が出るから。ゆっくり休んでて」

やっぱりそうだ。
よっぽどでなければ、ほかの人にお願いするはずがない。
だからこそ今朝わざわざアパートまで来たのだ。

『でもそうしたらフルで働く事に・・・』

「慣れてるよ。そんなに心配しなくても平気。しかも明日休みだしね」

『でも・・・・』

「もう店長に言ったから変更はきかないよー」

少しふざけたような口調で「休みなさい」と言っいる。
シフトの変更などいくらでも出来るはず。
出来るはずなのに。

「ゆっくり寝るんだよ」

『わかりました・・・。すみません、よろしくお願いします』

「はーい。じゃぁね」


ゆっくり携帯を耳から離した。


彼女は自分を省みない。
自分の事は後回しで。
他人を優先する。
辛い顔はみせない。
誰にでも笑顔で接する。

優しいのだ。彼女は。


誰にでも。


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| 「僕の一日」  | 16:19 │Comments2 | Trackbacks0編集

コメント

誰にでも……
この章のラストフレーズ、「誰にでも」。
うーん、そうなのですか。
するとすると……有利さんは不満なんですかね?

人のまとう空気、綺麗な音、そういうの、私は鈍感ですから気づきませんけど、わかるような気はします。
誰かと会って第一印象、意地悪そう、とか思ったらわりと当たってて、そう思ってるからむこうにも好かれてなくて。

そういうことが最近、ありましたので、まあ、そんな感じなんでしょうね。
誰にでも優しい彼女と、繊細な彼はこれからどうなっていくのでしょうか。

2012.10.03(Wed) 00:45 | URL | あかね|編集

あかねさま
彼は不満なんですね。
自分だけ特別というわけじゃなくなってしまうから、でしょうか?彼の場合。

彼は特にお化けが見えるとか、予知夢を見るとか、そういうのはないけれど、
誰もが持ってる第6感が働きすぎているというか、「コレ」というものはないけど、
漠然と目に見えないものに敏感な感じです。
特に耳が良い、ということになっています。

>第一印象、意地悪そう・・・
これは分ります。そしてそれは無意識のうちに顔や態度に出ているんだと思います。
自分がちょっとなぁって思った相手からは、だいたい好かれない・・・。
そんな誰にでもあることを、感じ取って頂けたら嬉しいです。
いつも来ていただき、ありがとうございます。

2012.10.13(Sat) 23:46 | URL | ハル|編集

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