|
君の声 2
|
|
2008-06-21(Sat) 17:14
2
さて これまた不可思議な人と隣の席になった 音など 聴力が良いか 音感が良いか そんなところだろう 彼女は それとはまた別の事を話している
想像が出来ない
音に 感情?
確かに 人間 イライラしてればそれは声に表れる 何かショックな出来事や つらいときも何となく違って聞こえる
でもそれは あくまで いつもと “違って聞こえる” 決して “感情や想いが聴こえる” わけではない
彼女には 通常に聞こえる音の他に “何か” の音が 一緒に聴こえるのだろうか
彼女を見てるとおもしろかった
各教科ごと 色んな顔をした 教壇に立つ先生が違うからだ 何かを “聴いて” いるのだろう
クラスのみんなの声には少しずつ慣れていってるようだった
それでも 一人で席に座っているにも関わらず 両手で耳を塞ぎ 泣きそうな顔をするのを しばしば見かけた
そのとき クラスのみんなを見ても 別に変わった様子など いつもなかった
それでも彼女は苦しそうだった
『・・・ねぇ 大丈夫?』
彼女のその “特異体質” らしきものを知っているのは 自分だけと気付き 時々 声をかけていた
「あ・・・うん・・・ごめん・・・」
辛そうな顔を見ているのが辛く感じた
『聴こえなくする方法みたいのってないの? その 実際の音以外のものは聴こえなくするような・・・・』
その問いに彼女が耳から両手を離しながら言った
「あることにはあるんだけど ものすごい疲れるの」
音を聞きながら 音を聴かない どんな方法だというのか
『どうするの?』
「・・・こういう実際聞こえる声や音を ただ聞き流したり その必要な部分だけを拾って聞くの 感情なんかの音は 意識的に遮断するの」
『・・・・』
もはや未知の世界で 彼女が何なのか分からなくなってきた
「ただ それをすると通常に聞こえているはずの音を聞き逃したり 遮断するのに集中してしまって 他が見えなくなってしまうの」
それは 彼女しか体験したことのないこと 自分には 何もわからない
「・・・・そんな顔しないで 辛くなるじゃない」
こっちを向いて彼女が言った
『え?・・・』
「何だか 泣きそうだよ」
『・・・・・』
「あなたが その声で良かった 隣の席のあなたが そういう人でよかった」
彼女は苦しみの中に笑顔を見せながら言った
『え?』
「あなたの声は 私にとってとても気持ちが良い声をしているの だから単純に聞いてても楽だし とても落ち着く」
『・・・・』
自分の声など分からない 他人に聞こえている声は 自分の耳に聞こえている音と違うことだって 分かっているけど その自分の声をまともに聞いたこともない
「そして その声音の中にはいつも 他人を想う音が入っている それはとても優しい音 聴いていて安心する」
他人を想う? そんなこといつも想っているわけない 相手を想いながら 考えながら会話をしているというのか?
「私が実際の音と一緒に聴いているものはね 別の言葉や別の音というわけではないんだよ」
『え?』
どんどん分からなくなる 彼女の聴こえている世界
「私が一緒に聴いているのは そこに含まれる感情 想い 別に言葉として存在はしていないもの 言葉と一緒に含まれる 内にあるだろうものを 実音と一緒に 耳が感じているの 聴いているの」
『・・・・・』
「難しいかな・・・えっとね 人って 怒ってたりすると いかにも “怒ってます” って声に出てすぐ分かるじゃない? 簡単にいうと あれかな? そういうのを 全部 良いものも 悪いものも 常に一緒に聴いているの 耳が感じているの」
『あ・・・・』
自分が以前考えていた事
「有賀君は 私と話すとき いつも私を心配したり 気遣って話してくれてるでしょ?」
『え?』
正直 無意識である これといって 常に彼女の耳を心配したりして話しているつもりはない
「多分 無意識だと思うけど そこなんだよね 無意識に 相手を想って話せている だから私はとても楽になる それを聴いているから 安心する」
『話していると ラク?』
自分を指差しながら 彼女に聞いた
彼女は髪を掬い上げ 耳にかけながら答えた
「もしも こうして話していられるなら 私はこうやって 耳を出して会話をしていられるし 話をしたい その声は 聞いていて心地良いから 他の音すらも 関係なく 私の耳に一番大きな音で入ってくるから」
彼女が笑った
耳を出して 本当に嬉しそうに笑った
そして彼女が隣の席にいる自分へ手を伸ばしてきた
「その声で 傍にいてくれる?」
今 思えば その言葉は “好き” “愛している” を超えた言葉だったのかもしれない
けれど 今となっては もう 確かめようもなかった
そしてその時 自分へと伸ばしてきた手を その重みも 苦しみも知らずに 握り返した

|
|
コメント
|
ハルさん 私も自分の声がどんな風に聞こえているのか分からないです
結婚して留守番電話に声を吹き込んで誰?って思わず言っちゃいました
他の人はそのままの声って言われたけど自分では不思議でした
読んでると続きが楽しみになってます
また来るね!
URL | ちーねえ #X4YsqK5w
2008-06-21 18:37(Sat) [ 編集]
|
私は自分の声を聞いたとき、
引きました・・・・。
なぜか、へこみました・・・。
お暇な時で大丈夫ですので、
遊びに来て下さいませ。。。
URL | ハル #-
2008-06-22 17:47(Sun) [ 編集]
|
|
コメントの投稿
|
|
トラックバックURL
|
http://harl.blog40.fc2.com/tb.php/339-c8b0ce95
...
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
|