君の声 1
ねえ 聞いて
私ね 好きな音だけを 聴くことが出来るの
だから
だから その声で呼んで
私の耳は あなたを見つけるから
「ねえ 聴いたことある? 空の音」
彼女は言った
『空の音?』
怪訝そうに僕は聞いた
「そう この空から音が聴こえるの」
そう言って彼女は空を見上げた
やっと暑さが和らぎだした
9月の夕暮れ
学校の帰り道
無機質な建物が並ぶ街の中
僕はまだ
彼女の恋人だった
1
彼女と出会ったのは 高校入学式
同じクラスで 同じ出席番号で
校長の挨拶の最中に
突然
彼女が倒れた
一気にざわめく体育館
先生方がいっせいに駆け寄ってくる
誰もが具合が悪くて倒れた と思っている中
彼女は
まるで眠っているように
穏やかな顔をしていた
「ごめんね 驚かせて」
隣から声がした
『いや 別に それより大丈夫なの?』
「もう平気 校長の声も聴こえないし」
彼女は笑って言った
『は?』
意味が分からず聞き返した
「ううん 何でもない
私 和泉
和泉 サヤカ
1年間 よろしく」
『あ 有賀 諒 よろしく』
彼女との初めての会話は
彼女が保健室から教室に戻ってきた休み時間だった
彼女は自分の机にカバンを置き
荷物を出しながらこう言った
「有賀君は耳が良い方?」
『はい?』
いきなり何を聞き出すんだ この人は・・・・
意味を判りかねて聞き返した
「だから 耳 良い方?」
『・・・聴力は普通だと思うけど』
いまいち意味がわからず 適当に答えた
「そっか」
『それがどうしたの?』
「なんでもない」
眉をひそめて 彼女を見た
彼女は笑った
「気にしないで」
気にしないで と言われると気になるのが人間
気になるけど それ以上聞けない雰囲気だった
『ねぇ』
「ん」
『具合 悪かったの?』
「え?」
『いや だから今朝・・・』
「あぁ 全然 体調良好!」
にっこり笑ってはっきりと答えた
『えぇ・・・と 良好って・・・』
倒れておいて 良好はないだろうと
つっこみを入れたくなった
「うん だから身体は 始めっから何ともなかったの
なんだけど 校長の声がねぇ・・・」
といういって 彼女はムッとした顔をした
そういえば さっきも校長がどうこうって・・・・
『校長がなんか関係あるの?』
「ん? うん 校長のあの声が私の体調を悪くさせたの」
『? ・・・え?』
日本語を聞き間違えたか
もしくは彼女が日本語の使い方を間違ったか
「だから 校長の声が悪いの」
『・・・・そうれは どういう・・・』
自分も彼女も日本語を間違ってはいないらしい
「私にとっては 校長の声は 倒れるくらい聞きたくない声音をしてるってこと」
『・・・・・声音?』
彼女は理解しかねてる僕を見て言った
「人の声は それだけでその人を表すことができるの」
そして肩に触れるぐらいの長さの髪を 両手で掬った
「私ね 人の声や音に その感情や想いを 一緒に聴いてしまうの」
生まれて初めて聞く台詞だった
両手で掬われた髪の隙間から 彼女の耳が見えた
これといって何も変わりはしないと思った
「んー・・・ダメだ」
そう言って 彼女は髪を下ろした
もはや意味が分からない
そんな僕の顔を見て彼女が言った
「耳を見せるっていう事はね 全ての音を一気に聴くようなものなの」
『・・・・・』
「それは 普通の物音も含め その辺にいる人 全員の声音を聴くということにいなるの」
『・・・・・・』
「それはちょっと無理 容量オーバー」
『・・・・・・』
「慣れれば まだ大丈夫なんだけど 今日がみんな初めてだから」
『・・・・・』
「・・・・・」
『・・・・・・』
「聞いてる?」
『・・・・え・・・・と・・・聞いてるけど・・・そのいまいち・・・・』
「意味が分からない?」
心の中を読まれた気分になった
「当然だと思うよ みんなそうだったもん
逆をいうとね そうやって音を聞いてない事を知ったとき
みんなを理解できなかったよ」
『・・・・なんかの特異体質?』
「多分」
にっこりと笑って彼女は席を立った

| 「君の声」 完 | 17:18 │Comments2 | Trackbacks0│編集│▲





読んでると引き込まれていきそうだね
特異体質っていいね 悪いときもあるのかな?
今日は自分のとかつての〜の弟の方でも書いてきました 疲れちゃったー
ハルさんはすごいよね
私半分もかけないかも・・・
2008.06.19(Thu) 19:59 | URL | ちーねえ|編集