『僕の一日』 


                    た
                    だ
 
                    わ
                    か
                    っ
                    か
                    く
                    れ
                    る
                    だ
                    け
                    で
                    よ
                    か
                    っ
                    た
                    は
                    ず
                    な
                    の
                    に

 

僕の一日 読む順番は下記のUP順一覧をご覧ください
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142434445464748495051525354555657585960616263646566676869707172737475767778798081828384858687888990919293949596979899100101102103104105106107108109110111112113114115116117118119

春の一日
12345678910111213141516171819202122232425262728293031

夏の一日
123456

秋の一日
1234567

冬の一日
1234567


▶「僕の一日 1~45」→「夏の一日 1~6」→「僕の一日 46~57」→
 「秋の一日 1~6」→「僕の一日 58~94」→「秋の一日 7~8」→
 「春の一日 1~16」→「僕の一日 95~99」→「春の一日 17~19」→
 「冬の一日 1~4」→「僕一日 100~104」→「春の一日 20~22」→
 「僕の一日 105~107」→「春の一日 23~31」→「僕の一日108~111」→
 「冬の一日 5~7」→「僕の一日 112~」の順番でUPしています

UP順一覧はコチラ↓
123456789101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142434445夏の一日 123456464748495051525354555657秋の一日 12345658596061626364656667686970717273747576777879808182838485868788899091929394
秋の一日 78春の一日 123456789101112131415169596979899春の一日 171819冬の一日 1234100101102103104春の一日 202122105106107春の一日 232425262728293031108109110111冬の一日 567112113114115116117118119





にほんブログ村 小説ブログへ
スポンサーサイト

| 「僕の一日」  | 13:49 │Comments6 | Trackbacks1編集

僕の一日 119

年が明けて2日目の朝。
世間じゃコタツでぬくぬくしている人が多い中、
俺たち販売業に従事している人間にとっては大きなイベントが待ち構えていた。

「店長ー、今年どれぐらい来ますかねー」

嵐の前の静けさ漂う店内で、
昨日の酒が抜けないと、マスクをした相沢さんが頭を抑えながら唸った。

「うーん、今年もそんなに多くは来ないと思うけど、
 毎年福袋は即完売だからそれぐらいは来るんじゃない?
 まあ、他の店に比べたら大したことないさ。」

福袋の数は3000円40個と5000円のが20個で計60個しかないが、
たいして広くもない店内に一気に相当数の人が集まれば、さばくだけで大変だ。
当然のことながら学生バイトの奥村くんと志季さんも含め、
店長、斉藤さん、相沢さん、石川さん、俺と7人フル稼働である。

「あ、両替は早く言えよ!少しは俺の財布とバックルームにあるけど、
 こんな時は両替機も並ぶからな!」

店長が自分の尻ポケットを叩きながら叫んだ。

相沢さんと奥村くんと志季さんの3人でレジに立ち、
石川さんと店長が福袋のセット等のレジ周辺のもろもろの作業、
斉藤さんと俺がお客の誘導を担当する。

「相沢達3人はレジから動くなよ。
 足りないものは全部俺か石川が持ってくる。
 接客や電話なんかは斉藤と有利にまかせる、いいな」
 
館内放送が開店を知らせる音楽へと切り替わると同時に、
地響きのような不気味な音が近づいて来た。

「さて、頑張りますか。ね、有利くん」

『はい』

斉藤さんの言葉を合図に店の入り口に立った。

エスカレーターを駆け足で登って来た人たちが、
それぞれお目当てのお店へ我先にと人を押しのけながら走っていく。
テレビで初売りの映像は何度も見たことがあったけれど、
実際に目の当たりにしたときは言い知れぬ恐怖jを感じたのを覚えている。
それでもうちの雑貨屋はマシな方で、2人でなんとか誘導できる。

クレームにならないように店内に一列に並んでもらい、
2種類あるうちどちらを買うか確認して整理券を配り、
なくなり次第用意しておいた「福袋は完売しました」のPOPを店の入り口に貼る。
これが店長が考えた福袋の販売の仕方だ。
狭い店内で四方からレジに並ばれてはクレームになりかねない。

「福袋購入のお客様はこちらにお並びください!」

このときの為に空けておいたスペースで、
いつも静かに話す斉藤さんが声を張り上げて右手を挙げた。
大きな声でもいい声は変わらないな、などといらないことを思いながら、
並んだ客に整理券を配っていく。
初売りだからと言ってみんなが福袋目当てなわけでもなく、
この日限定で販売の商品や割引のものを目当てに来る客もいる。
そのためいくら福袋購入の人に並んでもらっても、レジは他の客で列ができた。

BGMすらかき消されるほどに騒がしい店内では、どうしても会話する声は大きなものになる。
俺が客に話す声も大きければ、客同士の会話も同じだった。
イベント時の特有の高いテンションと場の雰囲気や活気に、
気分も高揚して開放的になっているのか、
普段ならきっと内緒話をするような声で話す会話も、
周囲に聞こえるような音量になっている人が多い。
接客をしながらでもそれは耳に入った。

「ちょっとあの店員イケメン!」
「ウソ、マジ?!」

これから整理券を配ろうとしている方から聞こえてくる。

「ホント!マジでイケメンじゃない?!草食系っぽいけどw」
「キャー!ほんとマジイケメンじゃん!背も高いし!細マッチョ系?!」
「髪の毛、超サラサラなんですけどwわけてくんないかなw」
「肌も超キレー!石鹸なにつかってんのかな?」

そういう話は周囲に聞こえないようにして欲しい……とは言えるはずもなく、
丸聞こえの会話を耳にした他の客が俺の方をチラチラと見た。


……う、うざ……。


いや、堪えろ、仕事だ自分。



問題の女の、いや、お客様に声をかける。

『3000円と5000円どちらの福袋をご購入ですか?』

なるべく視線を合わせないように整理券に目を向けて話した。

「ふたりとも5000円ですぅw」

学生らしき2人組がなぜか手を繋いで声を合わせて答えた。
高校生?大学生?いや、年齢不詳……化粧は恐ろしい、
もはや原型はよくわからないが2人とも同じ顔をしていた。
つけまつげにカラコンに、ガッツリ目の周りを縁取って、
髪染めてゆるふわにしたら量産型の仲間入り。
 
『5000円はこちらの整理券になります。なくさないでください』

そう呟いて2人に整理券を配り、すぐに後ろの客に声をかけた。

「間近で見るとカワイイかも!」
「ペットにしたい感じw」

嫌でも聞こえてくる声に耳を閉じて目の前の客に意識を向けるようにした。
胸の奥が重苦しくなってくる。
心の奥で深く長いため息をつきながら、並んでいる人全員に配り終えると斉藤さんに手を振った。
それを見て斉藤さんがレジの方へと順番に誘導して行く。

少しずつ進んでいく列の中からまたあの声が聞こえてくる。

「ちょっと!あのレジに案内してるっぽい人も超イケメンじゃない?!」
「ほんとだ!ちょっとハーフぽくない?!」
「マジで?!髪茶色いの地毛?!」
「メガネがチョー似合ってるんですけどw髪結んでるし!」
「マジこっちの方が好みなんですけどw」
「ウチはさっきの草食系の人の方が好みかなw」


最近の若者は「超」と「マジ」が欠かせないのだろうか。


列の先頭に目をやると、笑顔で対応する斉藤さんにハートを打ち抜かれた女性客たちが、
きゃーきゃー言いながら会計をしていた。
いや、実際レジを打ったり袋に入れたりしているのは相沢さんと学生バイトの2人なのだが、
男性客からも「イケメンすぎ」という声が聞こえた。

イベントやセールの後は“そういうの”が目当てのお客が増えて、
仕事中に声をかけられたり従業員出入り口付近で待ち伏せされたりすることが多くなる。
こういったイベント自体が嫌いではない分、そういう事ににうんざりしてしまう。
首からぶら下げている名札をわざと裏返しにして見えないようにしたり、
そういう感じの人の傍はなるべく通らないように気をつけてはいるのだが……。


嫌だな、こんなことをしている自分が。

どうして斉藤さんの様に堂々とスマートに出来ないんだろう。



「羨ましがられることも慣れたかな」
『慣れるもんですか?』
「うん。そのうちね」


斉藤さんがお弁当を持って家まで来てくれた日を思い出す。


年が明けて2日目の朝。
世間じゃコタツでぬくぬくしている人が多い中、
俺たち販売業に従事している人間にとっては大きなイベントが待ち構えていた。

「店長ー、今年どれぐらい来ますかねー」

嵐の前の静けさ漂う店内で、
昨日の酒が抜けないと、マスクをした相沢さんが頭を抑えながら唸った。

「うーん、今年もそんなに多くは来ないと思うけど、
 毎年福袋は即完売だからそれぐらいは来るんじゃない?
 まあ、他の店に比べたら大したことないさ。」

福袋の数は3000円40個と5000円のが20個で計60個しかないが、
たいして広くもない店内に一気に相当数の人が集まれば、さばくだけで大変だ。
当然のことながら学生バイトの奥村くんと志季さんも含め、
店長、斉藤さん、相沢さん、石川さん、俺と7人フル稼働である。

「あ、両替は早く言えよ!少しは俺の財布とバックルームにあるけど、
 こんな時は両替機も並ぶからな!」

店長が自分の尻ポケットを叩きながら叫んだ。

相沢さんと奥村くんと志季さんの3人でレジに立ち、
石川さんと店長が福袋のセット等のレジ周辺のもろもろの作業、
斉藤さんと俺がお客の誘導を担当する。

「相沢達3人はレジから動くなよ。
 足りないものは全部俺か石川が持ってくる。
 接客や電話なんかは斉藤と有利にまかせる、いいな」
 
館内放送が開店を知らせる音楽へと切り替わると同時に、
地響きのような不気味な音が近づいて来た。

「さて、頑張りますか。ね、有利くん」

『はい』

斉藤さんの言葉を合図に店の入り口に立った。

エスカレーターを駆け足で登って来た人たちが、
それぞれお目当てのお店へ我先にと人を押しのけながら走っていく。
テレビで初売りの映像は何度も見たことがあったけれど、
実際に目の当たりにしたときは言い知れぬ恐怖jを感じたのを覚えている。
それでもうちの雑貨屋はマシな方で、2人でなんとか誘導できる。

クレームにならないように店内に一列に並んでもらい、
2種類あるうちどちらを買うか確認して整理券を配り、
なくなり次第用意しておいた「福袋は完売しました」のPOPを店の入り口に貼る。
これが店長が考えた福袋の販売の仕方だ。
狭い店内で四方からレジに並ばれてはクレームになりかねない。

「福袋購入のお客様はこちらにお並びください!」

このときの為に空けておいたスペースで、
いつも静かに話す斉藤さんが声を張り上げて右手を挙げた。
大きな声でもいい声は変わらないな、などといらないことを思いながら、
並んだ客に整理券を配っていく。
初売りだからと言ってみんなが福袋目当てなわけでもなく、
この日限定で販売の商品や割引のものを目当てに来る客もいる。
そのためいくら福袋購入の人に並んでもらっても、レジは他の客で列ができた。

BGMすらかき消されるほどに騒がしい店内では、どうしても会話する声は大きなものになる。
俺が客に話す声も大きければ、客同士の会話も同じだった。
イベント時の特有の高いテンションと場の雰囲気や活気に、
気分も高揚して開放的になっているのか、
普段ならきっと内緒話をするような声で話す会話も、
周囲に聞こえるような音量になっている人が多い。
接客をしながらでもそれは耳に入った。

「ちょっとあの店員イケメン!」
「ウソ、マジ?!」

これから整理券を配ろうとしている方から聞こえてくる。

「ホント!マジでイケメンじゃない?!草食系っぽいけどw」
「キャー!ほんとマジイケメンじゃん!背も高いし!細マッチョ系?!」
「髪の毛、超サラサラなんですけどwわけてくんないかなw」
「肌も超キレー!石鹸なにつかってんのかな?」

そういう話は周囲に聞こえないようにして欲しい……とは言えるはずもなく、
丸聞こえの会話を耳にした他の客が俺の方をチラチラと見た。


……う、うざ……。


いや、堪えろ、仕事だ自分。



問題の女の、いや、お客様に声をかける。

『3000円と5000円どちらの福袋をご購入ですか?』

なるべく視線を合わせないように整理券に目を向けて話した。

「ふたりとも5000円ですぅw」

学生らしき2人組がなぜか手を繋いで声を合わせて答えた。
高校生?大学生?いや、年齢不詳……化粧は恐ろしい、
もはや原型はよくわからないが2人とも同じ顔をしていた。
つけまつげにカラコンに、ガッツリ目の周りを縁取って、
髪染めてゆるふわにしたら量産型の仲間入り。
 
『5000円はこちらの整理券になります。なくさないでください』

そう呟いて2人に整理券を配り、すぐに後ろの客に声をかけた。

「間近で見るとカワイイかも!」
「ペットにしたい感じw」

嫌でも聞こえてくる声に耳を閉じて目の前の客に意識を向けるようにした。
胸の奥が重苦しくなってくる。
心の奥で深く長いため息をつきながら、並んでいる人全員に配り終えると斉藤さんに手を振った。
それを見て斉藤さんがレジの方へと順番に誘導して行く。

少しずつ進んでいく列の中からまたあの声が聞こえてくる。

「ちょっと!あのレジに案内してるっぽい人も超イケメンじゃない?!」
「ほんとだ!ちょっとハーフぽくない?!」
「マジで?!髪茶色いの地毛?!」
「メガネがチョー似合ってるんですけどw髪結んでるし!」
「マジこっちの方が好みなんですけどw」
「ウチはさっきの草食系の人の方が好みかなw」


最近の若者は「超」と「マジ」が欠かせないのだろうか。


列の先頭に目をやると、笑顔で対応する斉藤さんにハートを打ち抜かれた女性客たちが、
きゃーきゃー言いながら会計をしていた。
いや、実際レジを打ったり袋に入れたりしているのは相沢さんと学生バイトの2人なのだが、
男性客からも「イケメンすぎ」という声が聞こえた。

イベントやセールの後は“そういうの”が目当てのお客が増えて、
仕事中に声をかけられたり従業員出入り口付近で待ち伏せされたりすることが多くなる。
こういったイベント自体が嫌いではない分、そういう事ににうんざりしてしまう。
首からぶら下げている名札をわざと裏返しにして見えないようにしたり、
そういう感じの人の傍はなるべく通らないように気をつけてはいるのだが……。


嫌だな、こんなことをしている自分が。

どうして斉藤さんの様に堂々とスマートに出来ないんだろう。



「羨ましがられることも慣れたかな」
『慣れるもんですか?』
「うん。そのうちね」


斉藤さんがお弁当を持って家まで来てくれた日を思い出す。


にほんブログ村 小説ブログへ

| 「僕の一日」  | 13:47 │Comments0 | Trackbacks0編集

| main |

プロフィール

ハル

Author:ハル
  ↓ぽくっと↓

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村
  ↑ぽちっと↑

このサイトに使用されている
画像、文章、その他を無断で掲載、転載、
複製することを禁じさせていただきます。

リンクフリーです

ブログ内検索

QRコード

QR

フリーエリア