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僕の一日 99

話をする機会を見つけられないまま、
18時を過ぎて早番の店長と石川さんが帰る時間になった。

「俺は残業するけど石川は帰っていいよ。
 まだ本調子じゃないんだろうからゆっくり休めよ」

レジ横にあるパソコンをいじりながら、店長が言った。

「はい、じゃぁお先に失礼します」

学生バイトの志季さんに仕事を引き継ぎ、
バックルームに入ったかと思うと、
すぐにコートとカバンを手に急ぎ足で出てきた。

『お疲れさま』

「お疲れさま。お先するね」

変わらない声と笑顔を見送って、大きく深呼吸をした。

斉藤さんは今日休みだし、話は何も聞けないまま。
仮に斉藤さんがいたとしても、何も聞けないで終わっちゃっただろうけど。

本当は彼女と話がしたかった。
体調は大丈夫なのか。
無理してはいないのか。

俺が迷惑をかけたから具合を悪くしたんじゃないのか。
斉藤さんが部屋に来たのか。


彼女の声を聞いて、話をして、安心したかった。
苦しいときにいつも向けてくれる優しい目が自分だけに向けばと思った。


ここ数日、落ち着いていたはずの心がざわめきだす。

彼女に会えないでいたのに、どうしてか分からないが、
精神的落ち着いていたのは確かだった。
少しだが、充実感すらあった。

それが今になってまた不安定になっている。

息が苦しい。

胸が重い。

「大丈夫?」

反射的に顔をあげると、
大きな段ボール箱を持った相沢さんが不安そうな顔で声をかけてきた。

「調子よくないなら帰っても大丈夫だと思うよ?
 店長も残るみたいだし、志季もいるし」

『すみません、大丈夫です』

肺から押し出す様な声で返事をした。

「あんまり無理するとまた調子悪くなるから、
 スタッフの数に余裕があるときは休んでもいいんだよ。
 これから忙しくなるし、いまのうちに体調整えておかないと、
 それこそ休めなくなるからね」

『……はい』


これは寝れば治るというものではない。
胸が重く息苦しくなる理由は。


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| 「僕の一日」  | 02:58 │Comments2 | Trackbacks0編集

僕の一日 98


相沢さんと一緒に売り場に出て、彼女から仕事を引き継いだ。

「あ、店長いまメーカーと打ち合わせ中で、
 終わったらそのままお昼休憩行くからって言ってました」

「わかった。じゃぁ、ミサは休憩入っていいよ」

「はーい」


何事もなくいつも通りに交わされる会話に、
俺一人が戸惑っていた。

バックルームからカバンを持ってきて社食に向かう彼女を見送る俺に、
相沢さんが声をかけてきた。

「そんな名残惜しそうな顔して、バレるよ?」

『え?!』

「本人にじゃなく周りにね」

『そ、そんな……そう、ですか?』

「少なくても私は気づくかな。
 それにしてもどうしたの?すこしピリピリしてる気がする」

『……顔に出てますか?』

「顔っていうか空気に?
 いまお客さんいないから気を抜いてるせいかもね」

当たり前のように話す相沢さんに、敵わないなぁと思いながら、
レジの担当番号を自分のものに打ちかえながら言った。

『どこから話せばいいのか分からないんですけど、
 なんか石川さんにいっぱい迷惑かけたこととか、
 俺が休んでる間、毎日斉藤さんにうちに来てもらってたこととか、
 もちろん相沢さんにも他の人にもいっぱい迷惑をかけたんですけど、
 その、なんというか……』

「結局、ミサが体調を崩した原因が自分なんじゃないかっていうことと、
 ミサが体調崩した時に斉藤さんがどれだけ面倒をみたかってことでしょ?」

核心部分をついて得意気に笑う相沢さんの表情に、
色んなことがバレているのではないかと不安になる。

『えー……と、まぁ、そんな感じです……』

「そうだねー。私は何も聞いてないし知らないけど、
 まぁ、ミサの部屋には行ったんじゃない?」

レジカウンター横に積まれている段ボール箱を開けながら、言葉を続けた。

「有利くんのときは毎日部屋に来ていたわけでしょ?
 ミサのときにそれをしない理由もないし、
 店長がいない間は斉藤さんが代行だから、
 スタッフの面倒見るのは当然のことだと思うよ。
 斉藤さんの場合は、少し面倒見過ぎなところがあるけどね」

『……そうですか?』

「私はほとんど休んだことないし、
 彼氏と同棲してるから斉藤さんがうちに来たことはないけど、
 体調を崩したりすると、いつも以上に世話を焼くところがある気がする。
 そこまでしなくても大人なんだから放っておけばいいのにって、
 思うことが時々あるんだよね」

俺自身は斉藤さんがしてくれたことをお節介と思っていないし、
むしろ助かったと感じている。
彼女だって具合が悪くてどうしようもないところを、
病院に連れて行ってもらったかもしれない。

今まで一度もないけれど、斉藤さんが体調を崩してどうしようもなくなったとき、
今度は自分が出来る範囲のことをしようと思っていたぐらいだ。


「そういえば斉藤さんが具合悪くしてるとこ、見たことないなぁ。
 休んだこともない気がする」


思い出したように相沢さんが呟いた言葉を、
俺は気にも留めなかった。


もし彼が彼女の部屋に行っていたとしても、
それは当然のことなのだ。
気にしなくていい。

もっと別のこと。


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| 「僕の一日」  | 16:38 │Comments2 | Trackbacks0編集

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