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僕の一日 89

歩さんと別れたあと、3時間の睡眠をとった。
いつもより深く眠れたらしく、身体は軽い。
本当は遅番だったが、斉藤さんと交換したので早番で出社すると、
バックルームで店長がロッカーの上に置いていた段ボールを開け、
何かを必死に探していた。

「うわっ……一年分のホコリが……」

『おはようございます。手伝いましょうか?』

「おー、おはようっゴホ、ウエェ……すげーホコリ……」

一年ぶりに開けられた段ボールからは大量のホコリが舞っていた。

「おはよー…ん?うわっ!すごいホコリ!」

同じ早番の相沢さんがバックルームに入るなり、ゲホゲホとむせた。

「店長ー、朝っぱらから何探してるんですか?
 たしか今日は遅番じゃなかったでしたっけ?」

ドアより一歩下がった場所から相沢さんが言った。

「おー、そうなんだけど、出張中に溜まった仕事もあるし、
 来月クリスマスだからその準備を今のうちにしておかないと、
 間近になってドタバタしちゃうと思ってさ」

「あー、クリスマス……クリスマス……もうすぐなのね。
 あの忙しい時期がもうすぐ来る……はぁぁ
 イブの日も忙しいから、ここ数年出かけてないんだよねー」

不満そうな声が相沢さんからもれる。
薄暗い店内を眺めながら大きくため息をついた。

「クリスマスは25日が本番なんだから、25日の夜にデートすればいいだろう?」

何のフォローにも解決策にもならない言葉が店長から発せられる。

「何言ってんですか!24日の夜が大事なんですよ!!
 店長ってどうしてこう雑なんですか?!」

「雑って、俺は人に対してはそんなに雑に扱ってないつもりだけど?」

「いやいや、そういうことじゃなくて……ねぇ?有利くん?」

『え?!』

タイムカードを押そうとしていた手がビクッっとなった。
ここは聞こえてないふりをして1階の事務室にある金庫にお金を取に行こうと思ったのに。

『えーっと……店長は片付けは出来ないけど、いい人だし……
 だから結婚もできたんだと思いますが……』

「いいこと言った!!給料をあげてやる!!」

段ボール箱から「クリスマス関連いろいろ」と書かれた箱を取り出しながら、
店長が満面の笑みで嬉しいことを言ってくれた。

「有利くん!絶対忘れちゃダメだよ!
 来年になっても時給が同じだったら私に言いなさい!」

『あはは、相沢さんにお願いしますね』

「まかせろ!」


店長が戻ってきて、やっといつも通りの毎日に戻った気がする。


彼女も体調を整えて出社すれば、
またみんなで仲良く仕事が出来ると思った。

ここで働きだして2年。
それはずっと変わらずにあった穏やかな日々。

きっとこれからも変わらないと、思っていた。

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| 「僕の一日」  | 17:47 │Comments2 | Trackbacks0編集

僕の一日 88

歩さんがひとり暮らししている部屋は、通っているS大学近くのワンルームマンションだった。
先日、痴漢から助けた女性もS大学だし、斯波くんもこの大学だ。
彼女――石川さんが住んでいるマンションも、
S大学近くの駅から自転車で20分程度のところだ。

偶然とは恐ろしい。

まさか石川さんと歩さんが姉妹とか、ないよな……ないない、似てない。
2つ下に妹がいるって言ってたから、いま21歳のはずで、
20歳の歩さんなわけないし……まさか誕生日が来てないだけ?
いやいや、多分違う。
絶対違っていて欲しい。

携帯番号交換した時に名字も聞いておけば良かった。


午前4時半過ぎに俺が住んでいるマンション前にタクシーが着いた。
部屋に戻ってすぐにテーブルの上に置いてある普段使っている携帯を開く。
メールを1件受信していた。

“返事が遅れてごめんね。
 身体の方はだいぶよくなったよ。
 明日はもともとお休みだから、ゆっくり寝てます。
 心配かけてごめんなさい。”


彼女からだった。

良かった。

連絡が来た。
うん、良かった。

斉藤さんが部屋に行くって言っていたから倒れてるとか、
そういうことはないだろうと思っていたけど、返事がないとやっぱり心配になる。
これで安心して眠れる。
今日は斉藤さんとシフト交換して早番になったから、早く休もう。
あさってには彼女も出勤できるだろう。

彼女に会ったら謝らないと。

先日の斉藤さんとの会話中、俺の意識が危うくなったとき、
助けてくれたのに、何も言わずに斉藤さんとバックルームをあとにしてしまったこと。


でも。
どうしてあのとき、震えていたのだろう。


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| 「僕の一日」  | 01:22 │Comments2 | Trackbacks0編集

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