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僕の一日  41

斉藤さんが来てから3日が過ぎて、それでもなかなか下がらない熱にうなされていた。

あの日以降、彼女も斉藤さんも家には来なかった。
店長が出張で他県へ行っているらしく、お店の一切を斉藤さんが任され、
俺が休んでいる分も、他のスタッフみんなで代わる代わる出社してくれていて、
時間などとれない状況にあった。

携帯も鳴ることはなく、静かな部屋の中でひとり。

買い物に行くにも起き上がるのも辛く、『仕事』の状況に身を置いてないせいか、
気持ちの切り替えすらできなくなっていた。

昨日の朝コンビニに行ってから、一度も外へ出ていない。
食べるものはほとんど無くなっていた。
彼女が冷蔵庫に置いていった食材を使って何かを作る気にもならなければ、
以前に買っておいたカップラーメンを食べたくもなかった。
いつもなら食べずに済ませるところも、仕事を休んでいる以上、
きちんと食べてきちんと眠り、身体の状態を万全にしなければならない。

もうすぐ陽が落ちる。

カーテンの隙間から入り込んでる太陽に目をやる。
このままではいけない。
とにかく少しでも食べないと。

横になっていることも辛くなっている身体を起こし、シャワーを浴びた。
少しだけ、気分が晴れる。

ジャケットを羽織って財布を手にしたところに、チャイムが鳴った。
時計の針は夜の6時をを回ったところだった。
会社の誰かがこのマンションに来るには早すぎる時間だ。

そこにいるのが彼女ではないことは、すぐにわかった。


誰だろう?


ドアを開けると、そこには長身の影。

「どう?調子は」

優しく穏やかで低い声が耳に届く。
吸い込まれそうな笑顔。
 
『斉藤さん…』

「ごめんね、なかなか来れなくて。今日はスタッフの人数が多かったから早めに上がらせてもらった」

『いえ、俺のほうこそずっと休んで…』

「それは気にしないで。ところで今すぐ家出られる?」

その声にいつもと違う感情が混ざっていた気がした。
ドアに掛けたままの手に、少しだけ力が入る。
こっちの様子に気づいてか、わずかに笑って眼鏡を掛けなおしながら言葉を続けた。

「車で来てるんだ。病院に行こう。」

『え…』

「それは風邪じゃないし、そのままじゃ治すのに時間がかかりすぎてしまう。
 医者に診てもらった方がいいよ」

『でも…』

「もしかして、病院に行くお金がないとか?」

『いえ、そういう訳じゃなくて…』


俺が気にしているのはお金じゃない。


「…夜7時までやっている内科を知ってるんだ。そこに行こう。評判のいい先生だよ」

『内科、ですか?』

「うん」


本当に内科でいいのだろうか。
これは精神からきているものじゃないのか。


「…病院、苦手?」

『……』


一緒に病院へ行ったら、いま通院していること、服用している薬のこと、
色々とバレてしまう可能性がある。

それだけはどうしても避けたい。

無意識のうちに左手首をつかんでいた。


「俺は受付まで一緒に行ったら、車に戻るから。
 あとは呼ばれるまで病院内には入らない。それでも行きにくいかな?」


いつもよりトーンの落ちた声。
少し困った顔で、こっちを見ていた。


俺は、何をしているんだろう。
こんなにしてくれているのに。
嫌だったなら、自力で病院に行けという話だ。
その前に自分の身体くらい、自分で管理しなきゃいけない。


『いま、準備してきます』

「うん。車で待ってる」


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| 「僕の一日」  | 01:20 │Comments0 | Trackbacks0編集

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