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僕の一日  36

横になってもあまり眠れず、うとうとの状態が続いた。
夕方になってやっと眠れるような感じになって、今日と同じへまはしないと、携帯のアラームをセットした。
これで寝たとしても、ちゃんと仕事前には起きることができる。

浅い眠りに入り、そのまま気持ちよく揺られていると、携帯が鳴った。
画面を見ると19時を過ぎていて、いつのまにか寝ていたことに気づく。

相手は斉藤さんだ。


『もしもし?お疲れ様です』

「お、大丈夫かな?そうでもないかな?」

『いえ、大丈夫です』

「そう?なら電話入れないと、心配するよ」

『え?』

「やっぱり。店長に電話入れてないでしょう」

『あれ?』


だって明日俺は遅番で、いまは間違いなく夜。
寝過ごしてはいない。


「大丈夫そうなとき、店長に電話入れてって言ったの、覚えてる?」

『…そうでしたっけ?』

「うん、そう。それよりいま起きられる?玄関開けて欲しいんだけどいいかな」

『玄関?』

「いま、部屋の前で電話してるんだけど」

『え?!』


玄関というからどこかと思えば、ドアの前で話している?
チャイム押してくれていいのに。

あわててドアを開けると、ビニール袋を片手に携帯を持つ斉藤さんがいた。


「大丈夫かな。心配で来てしまった。はい、お弁当。ちなみに店の近くのあのお弁当屋さんの」

『うわっ!斉藤さ・・・んっ』


差し出されたお弁当と笑顔に一歩引いてしまった。
この人の空気は、いつも強い。
気を抜くと持っていかれそうになる。

ただそこに居るだけで人の目を惹きつける力がある。

「どっちにとっていいか分からないリアクションだな…まぁ、少し良くなったみたいだけど」

『いや、そのすごく申し訳ないっていうか、ホントに迷惑ばかりかけて…』

「いいのいいの。みんな心配しているよ。だからゆっくり休んで」

『あ、また外で話しさせてる!入ってください』


その声と顔に加えて、あてられるには強すぎる空気に持っていかれかけた意識を引きずり戻す。
前も仕事帰りの彼女に立ち話をさせてしまった。
同じことを繰り返してどうする。


「え?いいの?具合大丈夫?」

『あ、大丈夫です。どうぞ』


彼女以外の誰かを部屋に入れることに、少しだけ抵抗を感じた。
今まで彼女以外の人を家に入れた記憶がほとんどない。

それでもこの人をこのまま帰すわけにもいかない。
わざわざ来てくれたんだ。


それに、彼女の何かを知っている。

“最近、無理してんのバレバレだからさ”

忘れられない、あの言葉。


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| 「僕の一日」  | 20:48 │Comments4 | Trackbacks0編集

僕の一日  35

ずっと続いている頭痛のせいか、少し吐き気がする。
そういえば熱を測ってない。

携帯をテーブルの上に置いて体温計を手にする。
38度ぐらいなら働けるけど、頭が回ってくれない。
早く元に戻さないと、どっちの仕事も中途半端になってしまう。

ちゃんと働いて、お金貯めて。
それで…。

感傷に浸りはじめたところに音が鳴る。
体温計を見ると、38.2の数字。

大丈夫。
今日休めば明日はちゃんと仕事に行ける。
大丈夫だよ。

このぐらい、どうってことない。
今までそうやって来たんだから。

ちゃんと寝て、ちゃんと起きて、仕事に。

何度も言い聞かせた言葉。
何度も大丈夫とひとりで繰り返した。


「大丈夫」


そう言って優しく隣にいてくれたのが彼女。
彼女が言えば大丈夫だと思えた。

傷も痛みも全部、本当に大丈夫になると思った。


いつも、思えた。


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| 「僕の一日」  | 17:56 │Comments2 | Trackbacks0編集

僕の一日  34

耳の奥に声が響く。
心地よいバリトン。

そうだ。

彼女のことを心配していた。
電話で聞いた、あのときの声。


「…もしもーし…起きてる?寝てる?どっち?」

『・・・ん・・・』

「俺にそんな声出しても、何も出ないよ」

『・・・・・うん・・・・』

「和哉くん。大丈夫?ちょっと心配なんだけど」


そう。
心配してた。
あの人。


『あ…れ?』

「お・・・気づいた?」

『えー…と…』


ズキズキと痛む頭を押さえる
まだ熱がありそうだ。

「起きた?」

その言葉でやっと目が覚める。
無意識に電話に出ていたらしく、ちゃんと携帯を耳にあてていた。


『うわっ!斉藤さん?!…っつ…』


勢いよく起き上がると、目の前がぐるりと回った。
そのまま倒れこんでしまう。

「そう。体調どう?動ける?」

落ち着いた声が頭に入る。
耳元で直接喋ってるみたいだ。
携帯を耳に当てなおす。


『あの・・・俺・・・』

「うん。まだ駄目だね。今日も休んでいいよ。俺がでるから」

『・・・え?』

「・・・大丈夫?・・・今日が何日で何時か分かってないかんじだなぁ」

『え?・・・今日?』


時計に目を向けると、9時50分をさしていた。
カーテンからは外の光が漏れている。

まさか・・・朝。
出社時間だ。
ざぁっと血の気が引くのが分かった。
あのあと眠り続けていたんじゃ…。

「もう飲み会から二日目だよ。全然連絡ないから心配だったんだけど、
 聞いたとおり今日も無理だね。ゆっくり休んでて」

『ま、待ってください……俺早番ですよね?』

「うん。だけど大丈夫。俺がもう出社してるから」

『・・・斉藤さん、今日休みですよね?』


彼女が始発で帰ったあと結局昼まで眠れず、お弁当を食べたあともソファーのうえで熱にうなされていた。
夕方になってやっと眠くなって、そのまま…。
そのまま目覚ましもかけず、眠り続けていた。


「うん、俺が休みだから大丈夫。人数は足りてるよ。安心して休みなさい。
 明日出社できるようなら一度店長に電話して。
 電話がなかったらダメってことで休みにするから。いい?」

『はい』

とんでもなく迷惑をかけている。


「石川も心配していたよ。だいぶ調子悪そうだって」

『…そう、ですか』

彼女に連絡を入れてない。
あんな姿を見たあとで、どう話していいか分からなくて、そのままにしてしまっていた。

「…お、噂をすれば、石川サンだ、おはよう」

『え?』

「ん?石川も早番だよ。いま代わる」


今日、早番で一緒だったのか。
もう休み過ぎてて分からなくなってきた。

「もしもし?大丈夫?連絡ないから気になっていたんだけど」

心配そうな彼女の声が携帯から流れてくる。

『ごめん、寝てて・・・』

「うん。こっちは大丈夫だからゆっくりしてね」

『うん…』


彼女も少しは休めただろうか。
かなり無理をさせてしまった。


「だって。じゃあ、お大事にね」

『あ、はい…すみません…』


低く優しい声を最後に通話が切れた。
もう10時。
本来なら店にいなきゃいけないのに。
情けない。
前回の病院のときといい、仕事を休むことが一番ダメなのに、
今月に入って何度目だろう。

このまま自分が駄目になっていくようで怖い。
これ以上、堕ちるわけにはいかない。
しっかりしないと。


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| 「僕の一日」  | 15:03 │Comments2 | Trackbacks0編集

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