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只今、ブログ工事中です。
こちらの「ハルと音」は小説のみとし、
それ以外の詩などは「ハルと音と色」へと、
引越しさせて頂きます。
今後も、詩やつぶやきに関しては、
「ハルと音と色」へと書き込みますので、
よろしくお願い致します。


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君の声
2008-05-04(Sun) 23:20



ねえ 聞いて

私ね 好きな音だけを 聴くことが出来るの

だから

だから その声で呼んで

私の耳は あなたを見つけるから








「ねえ 聴いたことある? 空の音」

彼女は言った


『空の音?』


怪訝そうに彼は聞いた


「そう この空から音が聴こえるの」


そう言って彼女は空を見上げた

やっと暑さが和らぎだした
10月の夕暮れ

学校の帰り道

無機質な建物が並ぶ街の中



僕はまだ


彼女の恋人だった



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家族
2008-03-19(Wed) 05:22
「ねー、わたし本当にママの子なのー?」


本屋をぶらぶらしていて、
耳に入った、無邪気な台詞。


反射的に振り返る。



幼稚園に通っているぐらいの歳だろうか。

かわいいピンクのスカートを履い女の子。


女の子がつかんで離さない手の先には、
女の子のママにしたら、
ちょっと年上かなと思う女の人。
買い物カゴが似合いそうな、そんな。


「ねーってばー」


ママと呼ばれた人が、
女の子に何かを話していた。

こちらには聞こえなかったが、
女の子が納得できる回答ではなかったのだろう。

そうしたら、


「ねー、パパー、 わたしはパパの子なのー?」


よく見ると、ママとパパと、もう一人。
女の子より2、3歳年上だろうか。

もう一人、女の子がいた。


4人家族なのだ。


袖をつかまれたパパと呼ばれた人は、
やはりママと同じぐらいの歳に見えた。


パパと呼ばれた人は女の子に何かを話していたけど、
やっぱり何を話しているのか聞こえなかった。

ただ、パパと呼ばれた人は笑っていて、
女の子も笑いながら、
パパと呼んだ人の足元にじゃれていた。


小さな1コマに振り返った自分


振り返ってしまった自分




まだなんだ


                                   
裸足
2008-03-15(Sat) 07:04

いつの間に ここへ来たのか

分からなかった



無意識か



目の前には小さな墓




「やぁ 会いに来たよ」



まだ陽が昇ってない
ぼんやりと明るくなりだした頃


ズキンと疼きだした傷

左腕には 深く大きな切り傷の痕


完治しているのに




痛むのはどうして



「まだ 恨んでるのかな」



物音ひとつない 
墓地の隅

一人立つ自分が怖くなる


また狂気にかられてしまうのではないか


君を手にかけたように



「ごめんね」



言葉と一緒にあふれ出る涙



「それでも 僕は」


あの日から

あのときから



変わらず



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本と放課後
2008-02-07(Thu) 11:06
「人は自分の意志で死ぬことができるんだって」

そう言ったのは
まだ ランドセルを背負った男の子

誰も居ない 
田園が広がる田舎道
夕暮れを背に歩く影が二つ

『本当に?』

もう一つの影が聞く
少し大人しい感じの かわいい声

「家にある本に載ってた」

男の子は呟く

『それで その本を読んで どう思ったの?』

女の子はランドセルの他に 白い布の袋を持っていた
あまり似合ってない すこし汚れた袋
消えかかった文字は 5−2 と書かれていた





金曜日の放課後 
二人は誰もいない音楽室で本を読んで過ごしていた

図書室は担当の先生が居ないと
すぐに閉められてしまう

3階の一番奥にある音楽室
音楽室とつながっている楽器置き場の戸の鍵を開けておき
手には何冊かの本を持って
楽器置き場から 広い音楽室へ

一番後ろの窓際の席で
二人はいつも本を読んで
時をやり過ごしていた



「今週 給食当番だったの?」

『うん』

「そっか」

女の子の本を持つ手に 少しだけ
力が入った

『洗い物 増えちゃった』

ちょっと笑いながら言った


「お母さん まだ帰ってこないの?」

『・・・・うん』

「僕のお父さんも ずっと帰ってきてないよ」

『・・・・うん』

辛そうにうなずいた女の子の手を静かに握った

女の子も握り返した


そうして補い合っていた






夕暮れで 長く伸びた影は
少しずつ動いていた

「自分の意志で死ねるなら
 何で 生きることが出来ないのかって 思った」


強く 強く 拳を握り締め
どうしようもない怒りをこらえていた


『・・・・・』


女の子は何も答えられなかった

その代わり 強く握られた拳を
小さな手でといてあげようとした

それに気づいた男の子は
ゆっくりと拳を開いて
女の子の手を握った

二人でいれば大丈夫だと思えた


だからいつも夕暮れ間まで
二人 一緒にいた

満たされない感情を
どうしようもない現実を
止まることの無い痛みを

何も言わなくても
互いに 想い合うことが出来た


二人でいれば 何も怖くはなかった


そうして 二人 手を繋いで生きていこうとしていた


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夏の一日
2007-09-22(Sat) 09:10
・・・ちゃん

ぴちゃん ぴちゃん


雨音がする

ふと 目を覚す


片手で枕を抱え 俯せに眠っていた。


ゆっくりと起き上がり ベランダへ向かう


半分だけ開いていた窓から少しだけ 雨が吹き込んでいた

静かに窓を閉める


外は薄暗かった


テーブルの上に置いてあったメガネをかける


ぼやけていた視界が クリアになる

時計を見ると5:00前だった

小さく溜め息をつく

『またか・・・』


タバコをくわえ 火をつけようとした そのとき

目の前が真っ赤になった

紅蓮の炎

逃げ場のない火の海

ハッとなってタバコとライターを投げ捨てる


『っ・・・はぁ・・・はぁ・・』

消えない悪夢

消せない過去と 許されない罪


『ごめんね 父さん 母さん』


投げ捨てたタバコをもう一度くわえる

カチッとライターの音がし かすかに紙が燃える音がした


『・・・はぁ』

煙とともに出たのは また溜め息


いつまで

こんな毎日を送るんだろう


うんざりしていた

大学からは電車で2駅 家賃4万のアパート

大学へと入れてくれた 叔父さんと叔母さんに感謝している


それでも

こんな毎日は

もう いらないんだ


インスタントコーヒーを一杯だけ飲んで家を出る


混み合った車内は

耐えるのに精一杯だった

人の熱 人の感情

すべては気持ちの悪いものばかりが溢れ出していた

耐えがたいは人の感情

みんな疲れていた

それでも働きに行かなければならない現実

それに耐える日々

勉強の毎日にうんざりした学生たち

居心地の悪い車内が みんなの感情に拍車をかけていた

そして自分もそんな一人だった



ああ

全部なくなってしまえばいいのに

疲れたんだ


こんな毎日


もう たくさんだ


楽になりたい



ガクンと足下が崩れた

電車が急ブレーキをかけたのかと思った


気がつくと誰かの腕が俺の身体を支えていた


「大丈夫ですか?」

ガタンゴトンと揺れ続ける この耐えがたい車内で

一気に周辺の空気の濁りが消えた気がした


消された気がした


代わりにそこには静かで穏やかな空間となった

わけがわからなかった

「あの 大丈夫ですか?」

また同じ声がした

「あの・・・」


我にかえって顔をあげる

きれいな顔をした人だった

自分と同じくらいの歳だろうか


『あ、大丈夫です。すみません・・・』

片手でメガネを掛け直す

「顔色悪いですよ 次の駅で降りた方が・・・」

『はい・・・ありがとうございます』

「いえ 気にしないで下さい」


彼は優しく笑った



ガコンと音をたて電車が止まりドアが開いた

ずっと支えてくれていた彼も一緒に降りた



支えてけれていた彼の腕は細かった

華奢な人だと思った

そして何よりその細い腕に付けている

幅のあるベルトの 珍しい腕時計が印象的だった



「あ 一人で大丈夫です すみません」

「俺もこの駅なんです 時間空いてるんで気にしないで下さい」

穏やかな空気が溢れた

ベンチに座らせてくれた彼は

「ちょっと待ってて下さい」

と言ってホームの階段を上って行った



彼の姿を見ながら額に手をあてる


夏風邪だろうか

頭痛に倦怠感

メガネをはずして目をこすった


『はぁ・・・』


もはや 良い事なんて何もない

疲れる毎日

うんざりだ


夏の暑さが本当に恨めしい


ぼーっとしていると

遠くから走って来る音がした

「すみません お待たせしました」

彼の声がした

「どうぞ」

メガネを掛け直す

差し出されたのはペットボトル

ミネラルウォーターだった


「少しは飲んだ方がいいと思います 脱水症状起こしますから」

『あ ありがとうございます』

彼からペットボトルを受け取る


「本当は冷たいのはダメなんですけどね」

『いえ そんな 助かります』



蒸し暑い空気とこのベンチの上

目の前はただひたすら電車が流れ 人が流れた

彼はベンチには座らず隣りに立っていた


彼の空気は穏やかで

隣りにいてくれるだけで気持ちが和んだ


蒸し暑いのに

なぜか心地良い

そんな空気に安心した

久しぶりに 本当に安心していた



ガクンと身体が落ちかけた

「あ もう少し休んで下さい」

彼が言った


『・・・・』

ぼーっと目を開けている自分に気付く

ハタと我に返ると

隣りに立つ彼に寄り掛かっていた

『すっ すみません!』

「いえ 今 一瞬寝ただけですよ」


彼は静かに答えた


「もしかして寝てないんじゃないですか?
 もし今 眠れるなら 少しでも眠った方がいいですよ」

『・・・いえ 大丈夫です』

大丈夫と言いながら立てずにいる自分に気付く

彼はなぜ

寝てないと分かったんだろうか


倒れかけたから 当たり前か


「それとご飯は少しでも食べないと また倒れますよ」

『・・・なんで』

「なんとなく」



見透かされている気がした





『助けて頂いて本当にありがとうございます あとは大丈夫です』

「そうですか 無理はしないでくださいね」

『はい』

「じゃあ気をつけて」

彼が軽く頭を下げて 階段に向かい歩き出した



彼の後姿を見る

彼が遠ざかっていく



ここで逃してはいけないと思った

二度と手にすることができなくなると


それが何かなんて分からない

それが何でも構わない



『待って!』

彼が振り返る

『・・・』

「どうかしましたか?」

『ここでまた会えるかな』


彼は拍子抜けした顔をした

自分でも自分の行動に驚いている


「はい また今度」

彼は笑った

『俺は斯波 斯波隆之』

「有利和弥です」

『ありがとう』

「いえ また」

彼はまた歩き出した



やがて彼はホームを出て行った



ああ


多分

彼は自分と何か同じモノがあるんだろう



そう 感じた




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