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1クリック1円から クリック課金で集客アップ ハルと音 「君の声」 完
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それ以外の詩などは「ハルと音と色」へと、
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今後も、詩やつぶやきに関しては、
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君の声 3
2008-06-22(Sun) 18:19


  3

彼女はいつも 音楽を持ち歩いていた


イヤホンをし 音楽を流し込む事で
外の世界の音を聴かないようにしていた
そうしなければ 下手に街中など歩けなかった


けれど 言った

「あなたが居てくれるなら イヤホンはいらない
 イヤホンをしたら あなたの声が聴こえなくなる」


どれだけ自分の声が彼女の安定を図っているかは分からなかったけれど
街中の 沢山の人間の声や色んな音 音楽に
ラクでいられるわけはなかった


そしてよく 具合を悪くしていた

両手で耳を塞ぎ 
外の世界から 自分そのものを遮断するかのように

涙目になりながら彼女が言った


「何か話して」


彼女が具合が悪くなる度 静かな場所を探し
彼女の髪を掬い上げ 直接聴こえるように


「大丈夫」


を 繰り返した



自分には それしか出来なかった
彼女の世界を 共有することは 出来ない
それが 苦しかった



彼女の苦しみを少しでもラクにしてあげたくて
学校では席替えをしても休み時間になれば 彼女の隣へ
帰りはいつも一緒に帰った




そして 蒸し暑い 夏を迎えた


彼女は春にも増して 辛そうだった

“暑い” “マジで何とかしてくれ” “お前が暑苦しい”

そんな言葉が増えたせいだろう
その言葉たちに 優しさが含まれていないのは自分でも分かる


『大丈夫? 屋上でも行こうか?』


昼休み 彼女に声をかけた


「・・・・んー そんな気力もないかも・・・・」

暑さと 人の声音にぐったりしていた


『保健室行かない? あそこならクーラーあるし
 静かだし 保健の先生しかいないし』

「ん・・・・ごめ・・・・あの先生ダメなんだ・・・・」

悪びれた声で答えた

『そっか・・・・』


下敷きで彼女を扇ぎながら
ひたすら昨日見たドラマの話をして 昼休みを過ごした



ようやく迎えた放課後

『すぐ帰ろうか?』

いつもより ぐったりとしている彼女が心配だった

「うん・・・・」

購買で冷たいジュースを買って
下駄箱で待っていた彼女の元へ走った

彼女が笑って 下駄箱に寄りかかっていた


「何で そんなに優しいの?」

『え・・・なんでって・・・・』




このとき 正直に 


“好きだから”


その言葉を彼女へあげれば良かった



けれど そのときは恥ずかしくて何も言えず俯いたところに

「ジュース もらっていい?」

彼女が言った



帰り道は比較的 元気だった


静かな裏道を いつも歩いて帰っていたため
彼女が 眉間にシワを寄せる事は少なかった



それに 安心していた



「ねえ 聴いたことある? 空の音」

突然 彼女は言った


『空の音?』


怪訝そうに聞き返した


「そう この空から音が聴こえるの」


そう言って彼女は空を見上げた


『空からも聴こえるの?』

「うん 漠然とだけどね 気持ちがいいよ」

そう言って 彼女は髪を耳にかけた

「耳を開放するって 気持ちがいいなぁ」

もう カラになっているジュースの空き缶を手に
目を瞑り 空を見上げ 笑いながら言った


その姿を ただ見ていた


『・・・・耳の開放?』


静かに聞いた


「うん 完全に耳を外に出して 完全に素の状態で 全部の音を聴くの」


『・・・気持ち良い?』

自分にはまるでその感覚が分からなかったから聞くしかなかった

「うん 最高」

満面の笑みで答えた


その笑顔を見て嬉しくなり
暑いというのに 彼女の手を握った


そして 裏道を 二人 ゆっくりと歩いていた



彼女は笑っていた

僕も笑っていた

二人 笑っていた




その時の自分には聞こえていなかった

気が緩んでいたことには変わりはない

何も見えていなかった

何も聞こえていなかった


彼女の声以外


彼女が ラクだと感じていることに 
喜びを感じていただけだったのかもしれない


手をつないで歩く帰り道
突然 彼女がつないでいた手を 一瞬強く握り
突き飛ばすように 
僕を後ろへと回しながら



手を離した



『え?』


声になっていたかは分からない


ただ その彼女の行動で後ろへと転んだ自分に驚いているところに




音がした


本物の音がした


音が 見えた気がした




次に目に映ったのは 


血を流しながら 目の前で倒れている 彼女の姿だった




何が なんだか 理解が出来なかった




転んでいる自分

その目の前に 血を流して倒れている彼女


そして 右を見て気付く


一台の車



運転席から出てきたのは 若い男の人だった

彼女に 何か声をかけているのが分かった

彼女は 反応しなかった

僕は道路に転んだまま その光景を見ていた

男の人は携帯電話で どこかに連絡をしていた



僕は手の伸ばした

手を伸ばせば 彼女は握ってくれる

それはいつもの事



けれど 今は握ってくれない

彼女から流れ出ているものは 赤い液体



そして理解する

彼女が 僕を庇って 車に轢かれたこと



その 開放している耳で 遠くの音を聞き
僕よりも 誰よりも早く 車が高速で向かってくるのを聴いた



『サヤカ!!』


我に返って 彼女の名を呼ぶ

返事はない

『おい!!サヤカ!!』

彼女を抱き上げた手を見て 頭が真っ白になる



真っ赤になった 自分の手



『サヤカ!!』


その声に 彼女が反応した

わずかに 眉間にシワを寄せた


『! サヤカ!! しっかりしろ!!』


「・・・・・」

うっすらと目を開き 僕を見たものの
声はなかった


彼女の口が 何かを言っている 動いている


自分には聴こえない 分からない




自分には聞こえない音を聴く耳がない

彼女のように 感情を聴くことも

しゃべらない空の声を聴くことも

それでも 彼女は何かを言っている


分からない


『サヤカ・・・分からないよ・・・・』



泣きながら 彼女を抱きしめる

 


     一瞬でいい 


     彼女と同じ世界を共有させて

     彼女と同じ 耳を 下さい

 

 



想いだけが 空回りする





彼女を もう一度見る

もう一度 名を呼ぶ



「・・・ぁ・・・・・・」



彼女の声が聞こえた

『サヤカ?!』


「・・・・・・・」


『おい!!』


大きく揺すっても反応のない身体



どんなに呼んでも反応もない



血まみれの彼女は もう動くことはなかった


ただ 静かに笑っていた


 




やっと暑さが和らぎだした


9月の夕暮れ



学校の帰り道

無機質な建物が並ぶ街の中





僕はまだ



彼女の恋人だった

 

 


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君の声 2
2008-06-21(Sat) 17:14



さて これまた不可思議な人と隣の席になった
音など 聴力が良いか 音感が良いか そんなところだろう
彼女は それとはまた別の事を話している

想像が出来ない


音に 感情?


確かに 人間 イライラしてればそれは声に表れる
何かショックな出来事や つらいときも何となく違って聞こえる

でもそれは あくまで いつもと “違って聞こえる” 
決して “感情や想いが聴こえる” わけではない

彼女には 通常に聞こえる音の他に
“何か” の音が 一緒に聴こえるのだろうか



彼女を見てるとおもしろかった



各教科ごと 色んな顔をした
教壇に立つ先生が違うからだ
何かを “聴いて” いるのだろう

クラスのみんなの声には少しずつ慣れていってるようだった

それでも 一人で席に座っているにも関わらず
両手で耳を塞ぎ 泣きそうな顔をするのを しばしば見かけた

そのとき クラスのみんなを見ても
別に変わった様子など いつもなかった

それでも彼女は苦しそうだった


『・・・ねぇ 大丈夫?』

彼女のその “特異体質” らしきものを知っているのは
自分だけと気付き 時々 声をかけていた

「あ・・・うん・・・ごめん・・・」

辛そうな顔を見ているのが辛く感じた

『聴こえなくする方法みたいのってないの?
 その 実際の音以外のものは聴こえなくするような・・・・』

その問いに彼女が耳から両手を離しながら言った

「あることにはあるんだけど ものすごい疲れるの」


音を聞きながら 音を聴かない
どんな方法だというのか


『どうするの?』

「・・・こういう実際聞こえる声や音を
 ただ聞き流したり その必要な部分だけを拾って聞くの
 感情なんかの音は 意識的に遮断するの」

『・・・・』

もはや未知の世界で 彼女が何なのか分からなくなってきた

「ただ それをすると通常に聞こえているはずの音を聞き逃したり
 遮断するのに集中してしまって 他が見えなくなってしまうの」

それは 彼女しか体験したことのないこと
自分には 何もわからない


「・・・・そんな顔しないで 辛くなるじゃない」

こっちを向いて彼女が言った

『え?・・・』

「何だか 泣きそうだよ」

『・・・・・』

「あなたが その声で良かった
 隣の席のあなたが そういう人でよかった」

彼女は苦しみの中に笑顔を見せながら言った

『え?』

「あなたの声は 私にとってとても気持ちが良い声をしているの
 だから単純に聞いてても楽だし とても落ち着く」

『・・・・』

自分の声など分からない
他人に聞こえている声は 自分の耳に聞こえている音と違うことだって
分かっているけど その自分の声をまともに聞いたこともない

「そして その声音の中にはいつも 他人を想う音が入っている
 それはとても優しい音 聴いていて安心する」

他人を想う?
そんなこといつも想っているわけない
相手を想いながら 考えながら会話をしているというのか?

「私が実際の音と一緒に聴いているものはね
 別の言葉や別の音というわけではないんだよ」

『え?』

どんどん分からなくなる 彼女の聴こえている世界

「私が一緒に聴いているのは そこに含まれる感情 想い 
 別に言葉として存在はしていないもの
 言葉と一緒に含まれる 内にあるだろうものを
 実音と一緒に 耳が感じているの 聴いているの」

『・・・・・』

「難しいかな・・・えっとね 
 人って 怒ってたりすると 
 いかにも “怒ってます” って声に出てすぐ分かるじゃない?
 簡単にいうと あれかな?
 そういうのを 全部 良いものも 悪いものも
 常に一緒に聴いているの 耳が感じているの」

『あ・・・・』

自分が以前考えていた事

「有賀君は 私と話すとき いつも私を心配したり
 気遣って話してくれてるでしょ?」

『え?』

正直 無意識である
これといって 常に彼女の耳を心配したりして話しているつもりはない

「多分 無意識だと思うけど そこなんだよね
 無意識に 相手を想って話せている
 だから私はとても楽になる
 それを聴いているから 安心する」


『話していると ラク?』

自分を指差しながら 彼女に聞いた

彼女は髪を掬い上げ 耳にかけながら答えた

「もしも こうして話していられるなら
 私はこうやって 耳を出して会話をしていられるし 話をしたい
 その声は 聞いていて心地良いから
 他の音すらも 関係なく 私の耳に一番大きな音で入ってくるから」



彼女が笑った

耳を出して 本当に嬉しそうに笑った

そして彼女が隣の席にいる自分へ手を伸ばしてきた




「その声で 傍にいてくれる?」




今 思えば その言葉は
“好き” “愛している” を超えた言葉だったのかもしれない



けれど 今となっては もう 確かめようもなかった




そしてその時 自分へと伸ばしてきた手を
その重みも 苦しみも知らずに 握り返した



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君の声 1
2008-06-19(Thu) 17:18

ねえ 聞いて

私ね 好きな音だけを 聴くことが出来るの

だから

だから その声で呼んで

私の耳は あなたを見つけるから




「ねえ 聴いたことある? 空の音」

彼女は言った


『空の音?』


怪訝そうに僕は聞いた


「そう この空から音が聴こえるの」


そう言って彼女は空を見上げた

やっと暑さが和らぎだした
9月の夕暮れ

学校の帰り道

無機質な建物が並ぶ街の中





僕はまだ


彼女の恋人だった







    

  1


彼女と出会ったのは 高校入学式
同じクラスで 同じ出席番号で

校長の挨拶の最中に
突然
彼女が倒れた


一気にざわめく体育館

先生方がいっせいに駆け寄ってくる

誰もが具合が悪くて倒れた と思っている中

彼女は

まるで眠っているように
穏やかな顔をしていた





「ごめんね 驚かせて」

隣から声がした

『いや 別に それより大丈夫なの?』

「もう平気 校長の声も聴こえないし」

彼女は笑って言った

『は?』

意味が分からず聞き返した

「ううん 何でもない
 私 和泉
 和泉 サヤカ
 1年間 よろしく」

『あ 有賀 諒 よろしく』



彼女との初めての会話は
彼女が保健室から教室に戻ってきた休み時間だった


彼女は自分の机にカバンを置き
荷物を出しながらこう言った


「有賀君は耳が良い方?」

『はい?』



いきなり何を聞き出すんだ この人は・・・・
意味を判りかねて聞き返した



「だから 耳 良い方?」

『・・・聴力は普通だと思うけど』


いまいち意味がわからず 適当に答えた


「そっか」

『それがどうしたの?』

「なんでもない」


眉をひそめて 彼女を見た

彼女は笑った


「気にしないで」


気にしないで と言われると気になるのが人間

気になるけど それ以上聞けない雰囲気だった


『ねぇ』

「ん」

『具合 悪かったの?』

「え?」

『いや だから今朝・・・』

「あぁ 全然 体調良好!」


にっこり笑ってはっきりと答えた


『えぇ・・・と 良好って・・・』


倒れておいて 良好はないだろうと
つっこみを入れたくなった

「うん だから身体は 始めっから何ともなかったの
 なんだけど 校長の声がねぇ・・・」

といういって 彼女はムッとした顔をした


そういえば さっきも校長がどうこうって・・・・


『校長がなんか関係あるの?』

「ん? うん 校長のあの声が私の体調を悪くさせたの」

『? ・・・え?』


日本語を聞き間違えたか

もしくは彼女が日本語の使い方を間違ったか


「だから 校長の声が悪いの」

『・・・・そうれは どういう・・・』


自分も彼女も日本語を間違ってはいないらしい


「私にとっては 校長の声は 倒れるくらい聞きたくない声音をしてるってこと」

『・・・・・声音?』


彼女は理解しかねてる僕を見て言った


「人の声は それだけでその人を表すことができるの」


そして肩に触れるぐらいの長さの髪を 両手で掬った


「私ね 人の声や音に その感情や想いを 一緒に聴いてしまうの」



生まれて初めて聞く台詞だった



両手で掬われた髪の隙間から 彼女の耳が見えた


これといって何も変わりはしないと思った


「んー・・・ダメだ」


そう言って 彼女は髪を下ろした


もはや意味が分からない

そんな僕の顔を見て彼女が言った


「耳を見せるっていう事はね 全ての音を一気に聴くようなものなの」

『・・・・・』

「それは 普通の物音も含め その辺にいる人 全員の声音を聴くということにいなるの」

『・・・・・・』

「それはちょっと無理 容量オーバー」

『・・・・・・』

「慣れれば まだ大丈夫なんだけど  今日がみんな初めてだから」

『・・・・・』

「・・・・・」

『・・・・・・』

「聞いてる?」

『・・・・え・・・・と・・・聞いてるけど・・・そのいまいち・・・・』

「意味が分からない?」


心の中を読まれた気分になった


「当然だと思うよ みんなそうだったもん
 逆をいうとね そうやって音を聞いてない事を知ったとき
 みんなを理解できなかったよ」

『・・・・なんかの特異体質?』

「多分」


にっこりと笑って彼女は席を立った

 

 




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